セッション情報 一般演題

タイトル O-09:

クローン病に対するアダリムマブの短期および中期治療成績

演者 志賀 永嗣(東北大学病院 消化器内科)
共同演者 遠藤 克哉(東北大学病院 消化器内科), 高橋 成一(東北大学病院 消化器内科), 川上 瑶子(東北大学病院 消化器内科), 只野 敏浩(東北大学病院 消化器内科), 奈良 志博(東北大学病院 消化器内科), 松下 勝則(東北大学病院 消化器内科), 宮澤 輝子(東北大学病院 消化器内科), 下平 陽介(東北大学病院 消化器内科), 諸井 林太郎(東北大学病院 消化器内科), 長澤 仁嗣(東北大学病院 消化器内科), 木内 喜孝(東北大学 保健管理センター), 下瀬川 徹(東北大学病院 消化器内科)
抄録 【背景・目的】クローン病(CD)の難治例に対する寛解導入および維持療法としてAdalimumab(ADA)が登場し、治療成績の向上が期待されているが、本邦における報告は多くない。現時点では先行して発売されたInfliximab(IFX)が効果不十分の場合に使用されていることが多く、海外の治療成績と比較して劣る可能性がある。そこで、CDに対するADAの治療効果(改善率・寛解率、ステロイド減量効果)を検討することを目的とした。
【方法】当院でADAが投与された難治性CD患者60例 を対象とした。投与8週後と24週後のCDAI改善率(CDAIが70以上低下)および寛解率(CDAIが150以下)を検討した。
【結果】対象の内訳は男性43例、女性17例、年齢15-62歳(中央値34歳)、体重41-98kg(54kg)、罹病期間0-34年(11年)、小腸型7例・大腸型10例・小腸大腸型43例であった。44例で腸管切除の既往があり(19例で人工肛門あり)、34例においてIFXの治療歴を有していた。プレドニゾロンを15例(25.0%)、免疫調節剤を18例(30.0%)において併用していた。51例でADA投与を継続している(投与期間中央値261日)。8週後のCDAI(中央値)は221から141まで低下し、 改善率67.9%(19/28)、寛解率50.0%(14/28)であった。8週後のステロイド投与量は有意に減少し、CRP値とAlb値も有意に改善した。24週後のCDAI (中央値)は153であり、改善率50.0%(12/24)、寛解率50.0%(12/24)であったが、易再燃性や活動性病変の残存という理由で術後早期に導入した症例に限定すると寛解率33.3%(2/6)と低下した。臨床背景の中ではIFX投与歴のある症例で非寛解例が多かった。
【考察】海外の治療成績と比較しても、ADAは高い治療効果を有していた。ただし、人工肛門を有する難治例などは除外されており(CDAIが計測できないため)、実臨床における有効性はより低いものと考えられる。生物学的製剤の効果を高めるためには、複雑な合併症を併発する前に適切なタイミングで投与することが重要であるが、ADAに関しては増量や期間短縮が保険適応となることを強く期待する。
索引用語 クローン病, アダリムマブ