セッション情報 特別企画 初期研修医(卒後2年迄)

タイトル W-05:

経鼻胃管による褥瘡性食道潰瘍から生じたと考えられる大動脈食道瘻の一例

演者 吉田 直記(岩手県立中央病院 消化器科)
共同演者 池端 敦(岩手県立中央病院 消化器科), 大方 英樹(岩手県立中央病院 消化器科), 阿部 康弘(岩手県立中央病院 消化器科), 植田 南(岩手県立中央病院 消化器科), 熊田 早希子(岩手県立中央病院 消化器科), 城戸 治(岩手県立中央病院 消化器科), 小原 範之(岩手県立中央病院 消化器科), 三浦 真奈美(岩手県立中央病院 消化器科), 高橋 太郎(岩手県立中央病院 消化器科), 横山 直信(岩手県立中央病院 消化器科), 松本 信(岩手県立中央病院 消化器科)
抄録 大動脈食道瘻は稀な疾患で診断困難なことが多く,しばしば致命的な消化管出血をきたす.今回,経鼻胃管による褥瘡性食道潰瘍から大動脈食道瘻を形成し致命的な消化管出血を来たしたと考えられる一例を経験したので報告する.【症例】80歳代,女性.主訴:吐血.家族歴:特になし.既往歴:関節リウマチ,気管支喘息.軸椎垂直脱臼.現病歴:関節リウマチにてプレドニン5mg/日が継続され,2ヵ月前から肺炎にて他院に入院していた.疼痛コントロールは不良であり,さらに2週間前にインフルエンザを発症後は経口摂取困難となり経鼻胃管による経胃栄養を受けていた.受診当日に2回吐血がみられたため当院に紹介転院となった.現症:血圧162/76mmHg,脈拍80/分・整,体温36.4度.結膜に貧血みられ,腹部は平坦で圧痛はみられなかった.血液検査では貧血,低蛋白血症,低ナトリウム血症,白血球増加がみられた.経鼻胃管を抜去後に上部内視鏡検査を施行したが,下部食道に拍動するなだらかな壁外性圧排があり頂部は凝血塊が付着する潰瘍を形成していた.その対側には軽度の発赤びらんがみられた.胃内には多量の血液,凝血塊がみられたが,体位変換の観察にても出血源はみられなかった.止血処置をせず観察のみで終了した.内視鏡検査直後の造影CTでは胸椎の腹側を屈曲蛇行する大動脈に接する食道壁の一部が菲薄していたが造影剤漏出はみられなかった.入院3時間後に吐血,意識低下,心肺停止となり,蘇生に反応せず死亡した. 【考察】大動脈食道瘻の原因は胸部大動脈瘤が半数を占め,他に食道悪性腫瘍,食道異物,食道潰瘍などがある.経鼻胃管による大動脈食道瘻は極めて稀であり,文献では成人例3例,重複大動脈弓の小児例で10例の報告がある.症状として,胸痛,間欠性動脈出血,最終的な失血というChiariの三徴が知られている.内視鏡的止血は困難であり手術による救命例の報告があることから,正確な診断と迅速な治療が必要である.出血を伴う食道粘膜下腫瘍類似の病変をみた場合は大動脈食道瘻の可能性を念頭に置いた慎重な診断が重要である.
索引用語 大動脈食道瘻, 経鼻胃管