セッション情報 特別企画 後期研修医(卒後3-6年迄)

タイトル O-13:

腹腔動脈起始部の狭窄を伴い,IVRが有効であった膵十二指腸Segmental Arterial Mediolysisの一例

演者 大方 英樹(岩手県立中央病院 消化器科)
共同演者 池端 敦(岩手県立中央病院 消化器科), 吉田 直記(岩手県立中央病院 消化器科), 植田 南(岩手県立中央病院 消化器科), 熊田 早希子(岩手県立中央病院 消化器科), 小原 範之(岩手県立中央病院 消化器科), 城戸 治(岩手県立中央病院 消化器科), 高橋 太郎(岩手県立中央病院 消化器科), 三浦 真奈美(岩手県立中央病院 消化器科), 横山 直信(岩手県立中央病院 消化器科), 松本 信(岩手県立中央病院 消化器科), 阿部 康弘(岩手県立中央病院 消化器科), 佐々木 康夫(岩手県立中央病院 放射線診断科), 村上 晶彦(岩手県立中央病院 内視鏡科), 天野 良彦(岩手県立中央病院 内視鏡科)
抄録 【症例】50歳代,女性.主訴:背部痛,心窩部痛.家族歴:特になし.既往歴:子宮筋腫.統合失調症.嗜好:機会飲酒,喫煙なし.現病歴:1週間前から背部痛が出現し,受診当日には心窩部痛と嘔吐があり救急受診となった.現症:貧血・黄疸なく,上腹部に圧痛がみられた.血液検査では肝胆道系酵素の著明な上昇がみられたが,炎症反応や腫瘍マーカーは正常範囲内であった.CT,MRIでは胆石と胆嚢壁の軽度肥厚がみられたが,肝内外の胆管拡張はみられなかった.上部内視鏡では表層性胃炎のみがみられた.第4病日にHb9g/dlと急激な貧血の進行がみられ,CTでは膵頭部から十二指腸周囲の後腹膜に血腫とその内部に造影される仮性動脈瘤がみられた.血管造影では腹腔動脈起始部の高度狭窄と狭窄後拡張がみられた.また,後上膵動脈に動脈瘤がみられたためコイル塞栓が施行された.その後は貧血の進行はみられなかった.十二指腸水平脚での通過障害のため経鼻胃管による減圧が施行され,35病日に食事が開始された.その後血便,下痢の出現があり,大腸内視鏡検査では虚血性腸炎を疑う縦走びらんがみられた.注腸造影,小腸造影では異常がみられないため食事を再開し,74病日に退院,現在まで再破裂や再出血なく経過している.【考察】Segmental Arterial Mediolysis(SAM)は,腹部内蔵動脈の中膜融解壊死により動脈瘤を形成し,時に破裂により腹腔内出血や後腹膜血腫などの臨床像をきたす急性疾患である.本例では腸管切除術ではなくIVRにて治療されており病理学的検討がなされていないが,内山らによる臨床的診断基準,すなわち,中高齢者,動脈硬化などの基礎疾患がない,突然の腹腔内出血で発症,血管造影で血管に数珠状の拡張と狭窄を認める,に合致しておりSAMと判断した.また,腹腔動脈起始部の狭窄は横隔膜正中弓状靭帯による圧迫などが推測され,膵頭部アーケードの血流増加が推測された.【結語】腹腔動脈起始部の狭窄を伴い,IVRが有効であった膵十二指腸SAMの一例を経験した.
索引用語 Segmental Arterial Mediolysis, 腹腔動脈起始部狭窄