セッション情報 特別企画 後期研修医(卒後3-6年迄)

タイトル W-11:

多発性筋及び十二指腸転移をきたし悪性リンパ腫との鑑別を要した膵尾部癌の1例

演者 高橋 貴一(みやぎ県南中核病院 消化器内科)
共同演者 阿曽沼 祥(みやぎ県南中核病院 消化器内科), 玉川 空樹(みやぎ県南中核病院 消化器内科), 油井 理恵子(みやぎ県南中核病院 消化器内科), 洞口 愛(みやぎ県南中核病院 消化器内科), 梅村 賢(みやぎ県南中核病院 消化器内科), 飯岡 佳彦(みやぎ県南中核病院 消化器内科), 大沼 勝(みやぎ県南中核病院 消化器内科), 三浦 雅人(みやぎ県南中核病院 消化器内科)
抄録 【症例】86歳、男性。【主訴】肝機能精査。【既往歴】高血圧症にて近医通院中。【現病歴】2013年2月下旬から大腿、右肘に皮下出血あり近医整形外科受診、肝機能障害を認め近医内科紹介となり、同医でも貧血及び胆道系優位の肝機能障害を認め、3月1日精査目的に当科紹介、入院となった。【経過】CTで総胆管、肝内胆管及び膵管拡張、多数の腹部、縦隔、鎖骨上窩にリンパ節腫大、肝内に複数の不整な低吸収域、右腎腰方形筋に腫瘤、腸間膜に複数の結節を認めた。MRIにて膵頭部及び膵尾部に2cmの腫瘤を認め、造影効果は低く、拡散強調画像では高信号を呈し、膵尾部腫瘤より尾側膵管の拡張を認めた。CA19-9,DUPAN-2,Span-1いずれも高値で、尾側膵管の拡張がみられたことから膵尾部癌、膵頭部リンパ節による閉塞性黄疸と診断したが、stage IVbにて減黄後化学療法の方針となった。ERCPにて中部胆管に3cmの狭窄を認め、一期的にmetallic stentを留置した。また、上部消化管内視鏡で十二指腸下行部に複数のSMT様に隆起した潰瘍性病変を認め、転移性十二指腸腫瘍が疑われ、生検では低分化型腺癌であり、免疫組織学的検討でCK7、CK20、CEA、低分子ケラチン陽性で高分子ケラチン、Cdx2、MUC2、MUC5AC、MUC6、chromograninA陰性にて膵臓癌由来が疑われた。FDG-PETにて多数のリンパ節を含む上述の病変の他、両大腿筋、右上腕筋など多数の筋にFDGの集積がみられ転移が疑われ、MRIでも筋転移が疑われたが悪性リンパ腫が鑑別に考えられたため、原発確認目的に右大腿部腫瘤から生検を施行した。病理診断では十二指腸からの生検と同様に腺癌であり、免疫組織学的にも同様で膵臓癌由来と診断した。肝機能障害は改善したが、化学療法を希望されずbest supportive careの方針となり他院に転院となった。【考察】本例は多数のリンパ節転移、肝転移の他十二指腸及び筋にも転移を認め、悪性リンパ腫との鑑別を要したが、免疫組織学的に膵臓癌の転移と診断し得た。膵臓癌の十二指腸転移、筋転移共に稀であり貴重な症例と考えられたため若干の文献的考察を含め報告する。
索引用語 筋転移, 十二指腸転移