セッション情報 特別企画 後期研修医(卒後3-6年迄)

タイトル W-20:

鼠径ヘルニアへの腹膜播種を契機に発見された胃壁内転移を有する膵癌の一例

演者 沖田 啓(山形市立病院済生館 消化器内科)
共同演者 黒木 実智雄(山形市立病院済生館 消化器内科), 善如寺 暖(山形市立病院済生館 消化器内科), 須貝 彩子(山形市立病院済生館 消化器内科), 名木野 匡(山形市立病院済生館 消化器内科), 三浦 敦司(山形市立病院済生館 消化器内科), 平川 秀紀(山形市立病院済生館 消化器内科)
抄録 【症例】70歳代女性【既往歴】65歳時に右腎細胞癌で手術。67歳時より先端巨大症と2型糖尿病に対して内服治療。【現病歴】平成24年10月、左鼠径部の膨隆を主訴に当院外科を紹介受診し、左鼠径ヘルニアとして造影CTを施行したところ、ヘルニアの内容物は腸管との連続性がない腫瘤であった。また、膵尾部に膵癌を疑う造影効果に乏しい領域を認めた他、胃壁内にも複数の円形腫瘤を確認した。PET-CTでは、これら全ての腫瘍においてFDGの集積を認めた。その他に異常集積を認める部位はなかった。以上から、膵癌の多発転移もしくは腎細胞癌の再発が疑われ、精査・加療目的に当科紹介となった。【現症】左鼠径部に腫脹あり、用手的に還納はせず、圧痛は認めなかった。【血液検査】CEA 24.1 ng/ml, CA19-9 12000 U/ml以上と腫瘍マーカーが高値を示していた。その他明らかな異常は認めなかった。【経過】入院の上で胃壁内の腫瘍に対してEUS-FNAを施行し、ヘルニア嚢腫瘍からも細胞診を提出した。いずれにおいてもadenocarcinomaの診断であり、腎細胞癌の再発は否定的であった。以上より、膵尾部癌の腹膜播種(ヘルニア嚢腫瘍)および胃壁内転移と考えられた。ご本人へ説明の上、S-1内服による治療を開始し、治療継続中である。【考察】ヘルニア嚢腫瘍は腹膜播種における稀な例として報告されている。報告例のほとんどが多発する播種巣の一つとして発見されているが、本症例の場合にはヘルニア嚢に限局した播種であった。また、胃壁内転移はリンパ行性転移の所見とされ、食道癌や胃癌での報告がみられる。医学中央雑誌web版で検索した限りでは、本邦で膵癌の胃壁内転移の報告はない。これらのことから、本症例は、興味深い転移形式を示した貴重な症例と考え、報告する。
索引用語 ヘルニア嚢腫瘍, 胃壁内転移