共同演者 |
洞口 淳(仙台市医療センター 仙台オープン病院 消化器内科), 野田 裕(仙台市医療センター 仙台オープン病院 消化器内科), 小林 剛(仙台市医療センター 仙台オープン病院 消化器内科), 伊藤 啓(仙台市医療センター 仙台オープン病院 消化器内科), 越田 真介(仙台市医療センター 仙台オープン病院 消化器内科), 菅野 良秀(仙台市医療センター 仙台オープン病院 消化器内科), 小川 貴央(仙台市医療センター 仙台オープン病院 消化器内科), 枡 かおり(仙台市医療センター 仙台オープン病院 消化器内科), 藤田 直孝(仙台市医療センター 仙台オープン病院 消化器内科), 及川 昌也(仙台市医療センター 仙台オープン病院 消化器外科), 藤島 史喜(東北大学病院 病理部), 澤井 高志(岩手医科大学医学部病理学講座 先進機能病理学分野) |
抄録 |
症例は79歳、女性。平成14年より膵尾部に径50mm大の嚢胞性病変を指摘されていたが、本人の希望により近医で経過観察となっていた。平成24年4月、以前より高値を呈していたCA19-9が5,263 U/mlとさらなる上昇を認めたため、精査加療目的に当科紹介となった。腹部USでは、膵尾部に径50mm大の類円形の嚢胞性病変を認め、内部には隔壁様構造がみられた。また嚢胞内腔にはsludge様の構造物が充満していた。EUSでは、描出範囲内に隔壁肥厚所見や壁在結節などは指摘できなかった。造影CTでは、嚢胞内の隔壁が明瞭に描出され、さらに嚢胞に隣接して脾臓に突出するように15mm大の低吸収域を認めた。同腫瘤は早期相で造影効果に乏しく、門脈相、平衡相で遅延濃染され、通常型膵管癌の存在が疑われた。MRIで嚢胞内部はT1、T2共に高信号を呈していたが、嚢胞と連続した脾内の腫瘤は同定できなかった。ERCPでは膵管の拡張はみられず、膵管と嚢胞との交通は指摘できなかった。以上よりMCNまたはIPMNに合併した浸潤性膵管癌が疑われ、当院外科にて脾合併膵体尾部切除術を施行した。切除標本の嚢胞内には茶色のsludgeと粘液が充満し、嚢胞と連続して脾内に20mm大の白色調腫瘤を認めた。組織学的に嚢胞上皮は粘液を含有する異型細胞からなり、壁在結節を形成する所見はみられず、丈の低い乳頭状隆起の形態を呈し、この上皮から連続して間質及び脾臓へ浸潤する管状腺癌を認めた。また、ovarian-type stromaはみられず、estrogen receptor及びprogesteron receptor染色は陰性であった。特殊染色の結果を含めて、gastric typeの分枝型IPMNに由来した浸潤癌と診断した。最終病理診断はinvasive IPMC, tub1, cystic type, Pt, 分枝型, 53x45x40mm, i-TS 24mm, pTS3, sci, INF β, ly0, v0, ne0, mpd+, pCH-, pDU-, pS+, pRP+, pPV-, pA-, pPL-, pOO+, pN0, pM0, fStageIVa, D1, R0であった。今回われわれは、壁在結節を伴わない分枝型IPMNより発生したIPMN由来浸潤癌を経験したので報告する。 |