セッション情報 特別企画 初期研修医(卒後2年迄)

タイトル O-61:

血清IgG4値正常の自己免疫性膵炎の一例

演者 吉田 直記(岩手県立中央病院 消化器科)
共同演者 池端 敦(岩手県立中央病院 消化器科), 大方 英樹(岩手県立中央病院 消化器科), 阿部 康弘(岩手県立中央病院 消化器科), 小玉 祐(岩手県立中央病院 消化器科), 植田 南(岩手県立中央病院 消化器科), 熊田 早希子(岩手県立中央病院 消化器科), 小原 範之(岩手県立中央病院 消化器科), 城戸 治(岩手県立中央病院 消化器科), 三浦 真奈美(岩手県立中央病院 消化器科), 高橋 太郎(岩手県立中央病院 消化器科), 横山 直信(岩手県立中央病院 消化器科), 松本 信(岩手県立中央病院 消化器科), 小野 貞英(岩手県立中央病院 病理診断科), 村上 晶彦(岩手県立中央病院 内視鏡科), 天野 良彦(岩手県立中央病院 内視鏡科)
抄録 【症例】50歳代,女性.主訴:背部痛.家族歴:特になし.既往歴:高血圧.嗜好:喫煙歴なし,飲酒歴なし.現病歴:1ヵ月前から背部痛が出現し,近医を受診した.USにて膵腫大と尾側膵管の拡張を指摘され当科紹介となった.現症:貧血・黄疸なく,腹部に圧痛など異常はみられなかった.血液検査ではアミラーゼ,リパーゼが高値であったが,IgG4は76.3と正常であった.抗核抗体40倍陽性であり,CEA,CA19-9,CRP,肝機能は正常範囲であった.US,CTでは膵全体の腫大がみられた.MRCPでは主膵管は膵頭部で不整な狭小化がみられ尾側でやや拡張がみられた.PETでは膵全体に不均等なSUV4前後のびまん性異常集積がみられた.自己免疫性膵炎が疑われプレドニゾロン30mg/日が開始された.2ヵ月後のERCP像では主膵管の狭小化はまだみられた.Vater乳頭部の生検では軽度の炎症性細胞浸潤がみられ,免疫染色では少数のIgG4陽性形質細胞がみられた.ステロイド開始4ヵ月後のCTでは膵腫大の所見はみられなかった.現在プレドニゾロン5mgを継続しているが,CTでは膵腫大はみられず4年間再燃はみられていない.【考察】臨床診断基準2011によると,本例では膵のびまん性腫大,主膵管の不整狭細像,ステロイド治療の効果により疑診に相当する.自己免疫性膵炎の10~20%の症例では血清IgG4値が正常範囲内であると報告されている.本例ではびまん性腫大であったが,IgG4正常例では,女性に多い,限局性腫大が多い,腹痛や急性膵炎の合併が多い,膵外病変が少ないなどの臨床的特徴が報告されている.また,Vater乳頭部の生検が診断に有用と報告されているが,本例の組織所見でもIgG4陽性形質細胞がみられており,自己免疫性膵炎を疑う根拠となりえた.【結語】血清IgG4値が正常であり,ステロイドの治療効果により診断可能であった自己免疫性膵炎の一例を経験した.
索引用語 自己免疫性膵炎, 血清IgG4値正常