セッション情報 ワークショップ13(消化器内視鏡学会・消化器病学会・消化器外科学会合同)

高齢者上部消化管出血における止血治療戦略-静脈瘤を除く

タイトル 消W13-9:

高齢者の消化管出血の特徴

演者 中村 由紀(日本大・消化器肝臓内科)
共同演者 水野 滋章(日本大・消化器肝臓内科), 森山 光彦(日本大・消化器肝臓内科)
抄録 【目的】高齢化社会に伴い、出血性消化性潰瘍の背景因子は変化してきている。当院における出血性消化性潰瘍患者の特徴について、高齢者と非高齢者で比較検討した。【方法】当院において2007年~2010年に緊急上部消化管内視鏡検査を施行し、出血性消化性潰瘍と診断した400症例(男性287例、女性113例)を対象とした。65歳未満を非高齢者、65歳以上を高齢者とし、基礎疾患や内服薬などの背景因子、治療経過などについて比較検討した。【成績】非高齢者183例(45.8%、男147、女36例)、高齢者217例(54.2%、男140、女77例)。潰瘍部位は、非高齢者では胃63.4%、十二指腸35.0%、胃十二指腸1.6%、高齢者では70.5%、26.7%、2.8%。潰瘍が多発の割合は、非高齢者29.0%、高齢者41.5%。Hピロリ陽性率は非高齢者75.5%、高齢者で55.3%。原因となり得る薬剤、A)NSAID、B)低用量アスピリン、C)他の抗血小板薬、D)抗凝固薬、E)ステロイドの服用歴は(重複あり)、非高齢者でA)14.2%、B)7.1%、C)3.3%、D)0.55%、E)3.3%、高齢者ではA)33.2%、B)24.4%、C)15.2%、D)8.3%、E)2.8%であった。いずれか1群でも内服例は非高齢者23.0%に対し、高齢者59.0%と高率であった。うち2群以上を内服率は非高齢者で16.7%、高齢者で35.2%であった。何らかの抗潰瘍薬の内服率は非高齢者で22.4%、高齢者で41.9%。輸血施行率は非高齢者50.8%、高齢者70.5%であった。2回以上の内視鏡的止血術(薬剤散布以外)を要した症例は非高齢者で7.1%、高齢者で15.7%であった。内視鏡的止血困難で手術やIVRを施行した症例10例のうち8例が高齢者であった。穿孔・穿通を合併した症例10例のうち9例が高齢者であった。平均在院日数は非高齢者16.6日に対し、高齢者23.7日と長かった。【結論】高齢者の出血性消化性潰瘍は非高齢者に比べて、Hピロリ感染が低率、NSAIDsや抗血栓薬の服用者が多い、潰瘍は多発が多く、複数回の止血処置を要する率が高いなどの特徴がある。また、少数例ではあるが、内視鏡的止血困難例、穿孔・穿通の合併率が非高齢者より高い傾向が見られ、注意を要すると考えられた。
索引用語 高齢者, 出血性消化性潰瘍