セッション情報 特別企画 初期研修医(卒後2年迄)

タイトル W-09:

胆嚢動脈を支配血管とした肝細胞癌破裂の1例

演者 半田 智之(独立行政法人 国立病院機構 仙台医療センター)
共同演者 田所 慶一(独立行政法人 国立病院機構 仙台医療センター), 鵜飼 克明(独立行政法人 国立病院機構 仙台医療センター), 真野 浩(独立行政法人 国立病院機構 仙台医療センター), 岩渕 正広(独立行政法人 国立病院機構 仙台医療センター), 田邊 暢一(独立行政法人 国立病院機構 仙台医療センター), 木村 憲治(独立行政法人 国立病院機構 仙台医療センター), 野口 謙治(独立行政法人 国立病院機構 仙台医療センター), 阿子島 裕倫(独立行政法人 国立病院機構 仙台医療センター), 杉村 美華子(独立行政法人 国立病院機構 仙台医療センター), 塩塚 かおり(独立行政法人 国立病院機構 仙台医療センター), 山尾 陽子(独立行政法人 国立病院機構 仙台医療センター), 宍倉 かおり(独立行政法人 国立病院機構 仙台医療センター), 吉田 はるか(独立行政法人 国立病院機構 仙台医療センター), 菊池 弘樹(独立行政法人 国立病院機構 仙台医療センター), 梅津 輝行(独立行政法人 国立病院機構 仙台医療センター), 阿部 泰明(独立行政法人 国立病院機構 仙台医療センター), 藤谷 拓(独立行政法人 国立病院機構 仙台医療センター), 三浦 裕子(独立行政法人 国立病院機構 仙台医療センター)
抄録 【症例】68歳男性【主訴】嘔吐、意識消失【既往歴】平成20年、アルコール性肝硬変、糖尿病【現病歴】平成21年9月にT3N0M0 StageIIIのHCCが発見され、これまで計4回TACE施行されている。平成25年1月のCT検査でS4、S5に多発再発を認め、3月に再治療予定となっていた。平成25年2月某日、パチンコ店にて嘔吐あり。精査目的に当院にタクシーで向かっている最中に車内で意識消失し、そのまま救急外来に搬送された。【初診時現症】意識清明、体温35.8℃、血圧94/46mmHg、脈拍66回/分、SpO2 100%。排尿後再び意識消失し、血圧は40mmHgに低下。【検査所見】RBC 332x104、Hb 11.6 g/dl。肝予備能Child-Pugh7点B。造影CTにてS5胆嚢床に存在するHCCから造影剤の漏出所見あり、HCC破裂と診断。【治療経過】止血目的に緊急TAEを施行。破裂HCCの支配血管は胆嚢動脈深枝および浅枝の両者と判断し、同部でリピオドール次いでゼラチンスポンジで塞栓。その際、胆嚢壊死を回避するため両分枝の起始部は開存させた。治療効果を高めるため2日後にPEI追加。治療後の造影CTでは早期濃染所見は消失し、造影剤漏出も消失。また胆嚢壊死や胆嚢炎も認めなかった。経過は良好で治療開始2週間後に退院し、4月に追加でTACEを施行した。【考察】HCCの自然破裂は肝癌全体の7.3%で、その死亡率は38%と報告されている。治療は、初期治療としてエタノールなどを用いてTAEを行い、全身状態が安定した後に肝切除術、TACEなどを追加することが多い。一方、胆嚢動脈を支配血管とするHCCへのTAEは胆嚢壊死、胆嚢炎のリスクがあるため、カテーテルが深部に挿入され、胆嚢壁が造影されない場合のみが適応とされている。本症例では胆嚢動脈深枝および浅枝両者が関与し、胆嚢壁も造影され、本来ならばTAEは推奨されない。しかし救命を優先し、胆嚢壁への血流が残存するようにTAEを工夫し、また再破裂を予防するためPEIを追加する治療法を選択した。【結語】胆嚢動脈を支配血管としたHCC破裂の1救命例を経験した。塞栓方法を工夫することによって胆嚢壊死は回避され、また追加でPEIを行うことによって再破裂も免れた。
索引用語 肝細胞癌破裂, 胆嚢動脈