セッション情報 特別企画 後期研修医(卒後3-6年迄)

タイトル O-36:

腹痛、嘔吐を繰り返し診断された上腸間膜動脈症候群の1例

演者 横川 綾希(公立岩瀬病院 消化器内科)
共同演者 國分 政樹(公立岩瀬病院 消化器内科), 高橋 裕太(公立相馬総合病院 内科), 熊川 宏美(公立相馬総合病院 内科), 吉田 直衛(公立岩瀬病院 消化器内科)
抄録 【はじめに】上腸間膜動脈症候群(SMA症候群)とは十二指腸水平部が前方は上腸間膜動静脈から、後方は腹部大動脈や脊椎から間欠的、あるいは急激に圧迫され、十二指腸に閉塞機転が生じ腹痛や嘔吐が認められる疾患である。今回、腹痛、嘔吐を繰り返したことが診断の契機となったSMA症候群の1例を経験したため報告する。【症例】24歳男性【現病歴】平成22年頃から年2~3回の腹痛、嘔吐を認めていた。平成24年6月より食後の腹痛、嘔吐が出現し、体重の減少が認められた。平成24年6月に近医受診し、上部消化管内視鏡検査(EGD)を施行されたが、軽度の逆流性食道炎と十二指腸潰瘍瘢痕が認められるのみであった。その後も腹痛、嘔吐の改善が認められないため8月16日に当科紹介受診。食事摂取困難であり、精査加療目的に入院となった。【入院後経過】入院時、BMI:18.2とるいそうが認められた。血液検査では炎症反応は認められなかった。腹部単純CTでは腸管の拡張は認められなかったが大動脈、上腸間膜動脈分岐角12度と狭く、その間に十二指腸が認められた。上部消化管内視鏡検査では食道、胃内に特記すべき所見は認められなかったが十二指腸水平部に壁外圧迫による狭窄が認められた。トライツ靭帯近傍まで十二指腸粘膜に炎症性腸疾患を疑う炎症所見や虚血、腫瘍性病変は指摘できなかった。また十二指腸造影検査では十二指腸水平部で造影剤の停滞が認められたが徐々に造影剤は流出し明らかな閉塞を認めなかった。以上からSMA症候群と診断した。高カロリー輸液を行いながら、分割食とし、悪心が認められる場合には前傾姿勢や伏臥位となって経過を見ていたところ腹痛や嘔吐は認められなくなり食事摂取可能となったため退院となった。【考察】SMA症候群は比較的まれな疾患であるが画像の発達により報告例は増加している。しかし急性胃拡張、胃腸炎、神経性食思不振症などとして見過ごされる事も多い。本症例は腹痛、嘔吐を繰り返し、症状の改善が認められず精査にてSMA症候群と診断された症例であり、若干の文献的考察も交えて報告する。
索引用語 SMA症候群, 腹痛・嘔吐