抄録 |
DIHSは特定の薬剤内服による臓器障害を伴う薬疹である。薬剤中止後も症状の遷延化を認め、HHV-6(ヒトヘルペスウイルス6)の再活性化が関与すると報告されている。今回、カルバマゼピン内服によるDIHSを経験したので報告する。症例は70歳男性。平成24年9月下旬より左顔面の疼痛を認め、近医で左三叉神経痛と診断され、カルバマゼピンを処方された。内服3週間後より、38度の発熱、体幹・四肢に発赤疹が出現した。前医での採血で肝機能障害(AST 341 IU/L , ALT 114 IU/L , ALP 286 IU/L , GTP 573 IU/L)を認め、精査目的に10月22日に当科で入院となった。入院後、肝庇護薬とプレドニゾロン20 mg/日で加療をしたが、改善は乏しく、メチルプレドニゾロンによるセミパルス療法(500 mg/日×3日間)を開始した。その後、皮疹・肝機能の改善を認め、プレドニゾロン60 mg/日の内服とし、徐々に漸減した。しかし、カルバマゼピン内服2か月後(入院第45病日)から肝機能障害の増悪(AST 254 IU/L , ALT 1631 IU/L , ALP 390 IU/L , GTP 521 IU/L)を認めた。入院時のHHV-6 IgG は10倍と低値であったが、肝機能障害の再燃を認めたため、HHV-6 IgGを再検査すると1280 倍と上昇、HHV-6 PCRも陽性であり、HHV-6の再活性化による肝機能障害と判断した。サイトメガロウイルスやEBウイルス、HHV-7は陰性であった。重症化は認めなかったため、プレドニゾロン50mg/日から5mg /週づつ漸減し、肝機能は徐々に改善した。第90病日にAST 19 IU/L , ALT 60 IU/L , ALP 234 IU/L , GTP 161 IU/L と改善し、プレドニゾロン20mg /日にて退院となった。本症例はカルバマゼピン内服後に2峰性の肝機能障害を認めた。最初の肝機能障害は薬剤アレルギーによると考えられ、2度目の肝機能障害はHHV-6の再活性化が関与していると考えられた。DIHSは死亡率10-20 %の疾患であり、若干の文献的考察を加え報告する。 |