セッション情報 特別企画 初期研修医(卒後2年迄)

タイトル W-01:

門脈浸潤を伴う肝細胞癌の治療後に腸間膜静脈血栓症をきたした1例

演者 中島 勇貴(福島県立医科大学 医学部 消化器・リウマチ膠原病内科)
共同演者 今泉 博道(福島県立医科大学 医学部 消化器・リウマチ膠原病内科), 郡司 直彦(福島県立医科大学 医学部 消化器・リウマチ膠原病内科), 岡井 研(福島県立医科大学 医学部 消化器・リウマチ膠原病内科), 菅野 有紀子(福島県立医科大学 医学部 消化器・リウマチ膠原病内科), 阿部 和道(福島県立医科大学 医学部 消化器・リウマチ膠原病内科), 高橋 敦史(福島県立医科大学 医学部 消化器・リウマチ膠原病内科), 大平 弘正(福島県立医科大学 医学部 消化器・リウマチ膠原病内科)
抄録 【症例】69歳 男性
【既往歴】60歳代 胆石症、大腸ポリープ
【現病歴】2009年C型肝硬変から肝S2/3の肝細胞癌(HCC)を認め、当科で肝動脈化学塞栓療法(TACE)を施行された。以後再発と治療を繰り返し2012年11月時点で腫瘍は門脈右後区域枝へ浸潤し、肝動脈造影では腫瘍部で動脈-門脈(A-P)シャントも認めた。
2013年4月、8回目のTACEを施行され偶発症なく退院したが、退院20日後に腹痛を主訴に当院受診。造影CTで門脈から上腸間膜静脈、脾静脈にかけての血栓形成と腸管浮腫、腹水が確認され、血栓形成による麻痺性イレウスの診断で緊急入院となった。入院時、体温は36.1℃、腹部は軽度膨満していたが圧痛はなく、蠕動運動は聴取されず鼓音を認めた。血液検査で軽度の肝酵素上昇(AST 60U/l)、凝固異常(PT 54.2%、Dダイマー 24.3μg/ml、FDP 57.0μg/ml)及び炎症所見(CRP 4.54mg/dl)を認めた。腸管壊死の所見がないことから手術適応はなく、ヘパリン10000単位/日の投与とイレウスチューブの挿入で保存的に経過観察された。症状は徐々に軽快し、入院第9病日の造影CTでは上腸間膜静脈から脾静脈の血栓は縮小していた。食事再開後も症状の増悪はなく、炎症所見も改善した。
【考察】進行肝癌患者で門脈浸潤はしばしば経験されるが、門脈血栓症から麻痺性イレウスの発症に至る例は極めて稀であり、腸管壊死に至れば致命的となる可能性もある。本症例はTACE治療後の発症であることから、治療内容やA-Pシャントの存在が病態に大きく影響していると考えられ、文献的な考察も踏まえ報告する。
索引用語 腸間膜静脈血栓, 門脈浸潤