共同演者 |
阿部 和道(福島県立医科大学 消化器・リウマチ膠原病内科学講座), 菅野 有紀子(福島県立医科大学 消化器・リウマチ膠原病内科学講座), 今泉 博道(福島県立医科大学 消化器・リウマチ膠原病内科学講座), 岡井 研(福島県立医科大学 消化器・リウマチ膠原病内科学講座), 高橋 敦史(福島県立医科大学 消化器・リウマチ膠原病内科学講座), 見城 明(福島県立医科大学 臓器再生外科学講座), 後藤 満一(福島県立医科大学 臓器再生外科学講座), 大平 弘正(福島県立医科大学 消化器・リウマチ膠原病内科学講座) |
抄録 |
【背景】切除不能の進行肝細胞癌(HCC)に対するソラフェニブの投与は本邦における治療法の一つとして定着したが, 完全著効が得られた症例は極めて少ない. 今回, 我々は原発巣切除後ソラフェニブ治療により肺転移が著明に縮小し, 集学的治療が奏効した症例を経験したので報告する【症例】66歳, 男性. 30歳の献血時にB型肝炎を指摘されていたが放置していた. 2012年4月に腹部膨満を主訴にA病院で受診. 腹部造影CTにて動脈相で濃染し, 平衡相でwash outする約20cm大の腫瘍と多発肺転移を認められた. AFP 50000 ng/ml以上, PIVKAII 283000 mAU/mlと高値であった. 肝障害度はAであった. 多発肺転移を伴うHCCと診断され, まずは原発巣に対し, 5月に当科で肝動脈塞栓術を施行され, 6月に当院外科で拡大肝右葉切除術が施行された. 手術所見は, 肉眼的には21×16×13 cm大の出血・壊死を混じた灰白色腫瘍で, 周囲に小結節が複数散見された. 背景肝は慢性肝炎であった. 組織学的には中分化型HCCであり, 一部低分化型が混じて, eg, fc(-), sf(+), s0、vp1, vv1, va0, b0, p0, sm(+), f0, pT4, pN0, pM1, stage IVBであった. 術後経過は良好であり, 多発肺転移に対し, 8月からソラフェニブ400mg/日の投与が開始された. 手足症候群がひどく一度ソラフェニブを1週間休薬したが, 400mgで再開し, 投与開始5ヶ月後のCTで多発肺転移は著明に縮小した. AFP, PIVKAIIも低下し, 現在も副作用なく通院している. また, 術後の血漿VEGF, HGFはいずれも低値であった【考察】ソラフェニブ投与後にAFPや血漿VEGFが低値のHCCは奏効することが報告されている. ソラフェニブ治療では本例のように著効する例が存在し, 示唆に富む症例と思われた. |