セッション情報 | 特別企画 後期研修医(卒後3-6年迄) |
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タイトル | O-47:左大内転筋血内出血により高度貧血を認めたアルコール性肝硬変の1例 |
演者 | 渡邉 清誉(弘前大学 医学部附属病院 消化器血液膠原病内科) |
共同演者 | 立田 哲也(弘前大学 医学部附属病院 消化器血液膠原病内科), 澤田 直也(弘前大学 医学部附属病院 消化器血液膠原病内科), 三上 健一郎(弘前大学 医学部附属病院 消化器血液膠原病内科), 遠藤 哲(弘前大学 医学部附属病院 消化器血液膠原病内科), 福田 眞作(弘前大学 医学部附属病院 消化器血液膠原病内科) |
抄録 | 【症例】44歳女性 【既往歴】28歳 卵巣嚢腫(摘出) 、29歳よりうつ病・アルコール依存症(当院精神科通院中) 【病歴】吐血を主訴に前医を受診し、マロリーワイス症候群と診断。この時、アルコール性肝硬変、食道静脈瘤も診断された。前医入院となり、輸血・投薬により全身状態は改善、左下肢の浮腫が退院前よりあったがリハビリにより歩行可能となったため退院した。退院後は吐下血なかったが、退院数日で嘔気、嘔吐、食事量低下が出現し、左下肢の浮腫・紫斑が増悪し歩行不能となったため、前医退院6日後に当院精神科を受診、同日当科紹介となった。当科受診時は体温 36.8℃、脈拍 80回/分、血圧 95/60mmHg、SpO2 95%、意識はJCS I-2、全身に軽度黄染あり、左下肢全体に浮腫・紫斑を認めた。直腸指診では便は黄色であった。血液検査では著明な貧血(Hb 3.5mg/dl)、肝機能障害(AST/ALT/γGTP=96/46/49 mg/dl)、黄疸(T-bil 10.6 mg/dl)、電解質異常Na/K/Cl=118/3.7/79 mEq/l)、凝固能異常(PT 45%、APTT 43.0sec、HPT 35%)を認めた。頭部CT及び胸部~骨盤造影CTにより、肝硬変による肝変形、脾腫、腹水、食道胃静脈瘤、脳実質の萎縮を認めた。また左大内転筋に腫脹あり、内部にやや高吸収域と低吸収域の部分が混在し血腫が考えられた。このためアルコール性肝硬変による肝不全、出血傾向からの左大内転筋内出血による貧血の進行から全身状態の悪化と診断し、当科入院となった。 【経過】RCC 計10単位、FFP 計15単位を補充し、その後は保存的治療を継続、全身状態及び左下肢浮腫・紫斑は徐々に改善した。全身状態改善後はリハビリ及び肝性脳症含めた精神症状、アルコール依存症に対する治療の継続が必要と考えられたため、入院38日目に精神科病院に紹介転院となった。 【まとめ】肝硬変では出血傾向を認めるものの深部出血である筋肉内出血はほとんど経験しない。今回、われわれは明らかな誘因なしに筋肉内出血を生じ、著明な貧血をきたしたアルコール性肝硬変の1例を経験した。肝硬変では稀ではあるが筋肉内出血がおこり得ることを念頭に置く必要があると思われた。 |
索引用語 | 肝硬変, 出血 |