セッション情報 特別企画 初期研修医(卒後2年迄)

タイトル W-04:

大腸癌を合併した特発性腸間膜静脈硬化症の1例

演者 菊池 郁(青森県立中央病院 初期研修医)
共同演者 高橋 一徳(青森県立中央病院 消化器内科), 菊池 英純(青森県立中央病院 消化器内科), 島谷 孝司(青森県立中央病院 消化器内科), 伊藤 智子(青森県立中央病院 消化器内科), 金澤 浩介(青森県立中央病院 消化器内科), 沼尾 宏(青森県立中央病院 消化器内科), 黒滝 日出一(青森県立中央病院 消化器内科DELIMITER青森県立中央病院 病理部), 田中 正則(弘前市立病院 病理部), 棟方 正樹(青森県立中央病院 消化器内科), 福田 眞作(弘前大学大学院医学研究科 消化器血液内科学講座)
抄録 大腸癌を合併した特発性腸間膜静脈硬化症の1例【症例】80代、男性【主訴】腹痛・嘔気・嘔吐【既往歴】虫垂切除術【家族歴】特記すべきことなし【内服歴】前医にて黄連解毒湯を内服中【現病歴】腹痛・嘔気・嘔吐あり、内服治療で症状改善せず、前医受診。イレウスの診断にて同院入院。入院時のCT検査にて小腸から横行結腸までの拡張、左側結腸の虚脱が認められた。下部消化管内視鏡検査(TCS)で腫瘍性病変が認められたため、当科紹介受診となった。CT検査では上腸間膜静脈の分枝の走行に一致し点状・線状の石灰化を認めた。当科でのTCSでは、横行結腸に周囲粘膜との境界が不明瞭な、約半周性の浅い潰瘍を有する低い隆起性病変が認められた。陥凹部位はpit VNで、生検では高分化腺癌の診断であった。また同時に、盲腸から横行結腸にかけて青色の粘膜が認められ、発赤、不整潰瘍を伴っていた。同部位の生検では、粘膜固有層に硝子化を伴った線維化が見られ、毛細血管周囲には膠原線維の同心円状沈着を認め、特発性腸間膜硬化症(IMP)の診断に至った。漢方薬を中止のうえ、当院外科にて結腸亜全摘術を施行した。手術標本ではp53はびまん性に陽性、beta-catenin陰性で、Ki67はtop-down typeであった。術後、腹部症状、癌の再発は認められず、現在経過観察中である。【考察】IMPは小山らによって最初に報告され、岩下らによって疾患概念の確立がなされた稀な疾患である。肉眼的に暗青色の大腸粘膜が認められ、腸間膜静脈の壁硬化が組織学的に認められる。原因は明らかではないが、近年、漢方薬との関連が示唆され、特に山梔子(クチナシ ,sansisi, geniposide)が注目される。本症例でも山梔子が含まれている黄連解毒湯の内服歴があった。さらに、IMPの大腸癌合併例は稀であり、pubmed、医学中央雑誌の検索範囲では自験例を含め6例目である。最近、炎症性腸疾患において慢性炎症を母地とした癌が発生することが知られており、興味深い症例と考えられ文献学的考察を含めて報告する。
索引用語 特発性腸間膜硬化症(IMP), 大腸癌