セッション情報 特別企画 後期研修医(卒後3-6年迄)

タイトル W-12:

微小嚢胞から腫瘤形成までの長期経過を追跡しえた混合型IPMNの1例

演者 阿部 泰明(独立行政法人 国立病院機構 仙台医療センター 消化器内科)
共同演者 木村 憲治(独立行政法人 国立病院機構 仙台医療センター 消化器内科), 鵜飼 克明(独立行政法人 国立病院機構 仙台医療センター 消化器内科), 鈴木 博義(独立行政法人 国立病院機構 仙台医療センター 臨床検査科), 島村 弘宗(独立行政法人 国立病院機構 仙台医療センター 外科), 武田 和憲(独立行政法人 国立病院機構 仙台医療センター 外科), 田所 慶一(独立行政法人 国立病院機構 仙台医療センター 消化器内科)
抄録 【症例】61才男性【現病歴】膵体部の約6mmの微小嚢胞について2006年からUS、dynamic CTで定期的に経過観察されていた。2013年1月のUSで増大傾向と、充実成分の出現を認めたため入院となった。【画像所見】US、EUSで膵体部に単房性嚢胞を認め、内部に約10mmの乳頭状腫瘤を認め、主膵管内にも進展していた。dynamic CT、MRIで膵実質と同程度の造影効果を示した。ERPでは十二指腸乳頭に開口所見を認め、膵体部の主膵管内に腫瘤による陰影欠損像を認めた。ソナゾイド造影後のドップラーエコーで、比較的大きな血管の流入が認められた。混合型IPMNの疑いで膵中央切除術が施行された。【病理所見】割面では約10mmの白色乳頭状腫瘤が主膵管および連続する単房性嚢胞内を占拠していた。H/E染色では類円形核と顆粒状の好酸性物質を有する異型円柱上皮細胞が乳頭状、腺管状に増殖しており、PAS、Alcian Blueで染色される細胞質内粘液を有していた。MUC1(-)、MUC2(-)、MUC5AC(+)、MUC6(+)で大部分は胃型の粘液形質を有していた。以上より、IPMA,intermediate to high-grade dysplasiaの最終診断となった。【考察】IPMN/MCN国際診療ガイドライン2012にIPMNの診療におけるコンセンサスが示されており、これによると主膵管型および混合型IPMNは悪性変化の可能性が高いため外科手術の適応と考えられている。混合型IPMNの場合、分枝型IPMNの嚢胞壁から発生した腫瘍が主膵管内に進展する場合と、その逆の場合とで悪性度に違いが生じるか否かについては議論の余地があると思われる。本症例においては経過を通じて嚢胞は一貫して単房性であり、微小膵癌発生の可能性を考え貯留嚢胞として経過観察していた。7年の経過中に、嚢胞の増大と主膵管の拡張が進行し、さらに粘液産生が証明され、嚢胞内と主膵管内に腫瘍が出現したことから外科手術が施行された。組織病理学的に主膵管と単房性嚢胞の境界部分から発生したIPMNと考えられた。【結語】7年の経過中に約6mmの単房性嚢胞からIPMAが発生する過程を観察し得た、IPMN発生のごく初期像を捉えられた貴重な1例と考え報告する。
索引用語 IPMN, 微小嚢胞