セッション情報 シンポジウム 「胃癌2013 -検診・診断・治療のup to date-」

タイトル S-02:

ピロリ菌感染を考慮した胃がん検診のあり方

演者 加藤 勝章(宮城県対がん協会 がん検診センター)
共同演者 千葉 隆士(宮城県対がん協会 がん検診センター), 島田 剛延(宮城県対がん協会 がん検診センター), 渋谷 大助(宮城県対がん協会 がん検診センター)
抄録 胃がん罹患のリスク要因としてはヘリコバクター・ピロリ(Hp)感染とそれに伴う胃粘膜萎縮の進展が重要である。そこで、血清Hp抗体検査とペプシノゲン(PG)法併用による胃がんリスク評価のABC分類(胃の健康度評価)を胃がん検診に導入し、効果的かつ効率的な胃がん対策の構築を目指そうという議論が盛んに行われている。しかし、ABC分類は、あくまでもの胃がん罹患予測であって、胃がんを診断するものでは無く、胃内視鏡検査や胃X線検査等の画像診断と組み合わせて用いることが前提である。ABC分類のメリットは、罹患リスクベースの対象集約による検診の効率化、Hp未感染者に対する不必要な検査による不利益の回避、検診未検者の画像検診への誘導にある。さらには、Hp感染胃炎患者に対する除菌による胃がん1次予防への期待もある。しかし、胃がんリスク評価に基づいた対象集約型検診の有効性の科学的検証は未だ不十分であり、新たな管理システムの構築、自治体の財政負担、内視鏡医のマンパワーの問題など課題は多い。また、ABC分類の検査精度についても課題があり、当施設の検討では胃集検発見胃がんの約7%はA群と判定され、また、A群と判定された人間ドック受診者の約10%に画像検査にて胃粘膜萎縮が確認された。こうした偽A群の存在に加え、除菌症例のA群への混入も問題である。A群の判定は慎重に行うべきである。とはいえ、Hp感染胃炎の除菌治療が保険適用となり、胃がん検診のあり方もHp感染を考慮したものに変わらざるを得ない。胃がん検診の本来の目的は胃がん死亡抑制であり、そのために検診精度の向上や効率化に努めることはもちろんであるが、除菌による胃がん予防効果に関する正しい情報提供や除菌後の経過観察の場として胃がん検診は積極的に活用されるべきである。除菌すれば胃がんにならないといった誤った情報が広まらないよう、住民、自治体担当者、医師の正しい啓発が重要であり、ピロリ菌除菌時代に適応できるように胃がん検診システムの再構築が望まれる。
索引用語 胃がん検診, ABC検診