抄録 |
腹腔鏡下胆嚢摘出術(以下LC)における合併症の一つに術後胆汁瘻がある。その治療は術中に留置したドレーンにより治癒する場合、内視鏡的経鼻胆管ドレナージ(以下ENBD)、再手術など様々である。今回、ENBDにより治癒した術後胆汁瘻症例について検討した。【対象】平成17年1月から平成24年12月までの8年間に施行したLC 530例のうち、術後胆汁瘻を10例で認めた。そのうちENBDチューブを留置した症例は3例であった。<症例1>41才、女性。胆嚢炎にてLCを行う(開腹移行)。経皮経肝胆嚢ドレナージ(以下PTGBD)あり。術後33時間で胆汁瘻を確認。CTにて右上腹部を中心にドレナージ不十分の部位を認めたため、経皮的ドレナージ及びENBD施行。PTGBDの瘻孔からの胆汁瘻であった。ENBD後15日で胆汁瘻治癒。<症例2>61才、男性。胆嚢腺筋腫症にてLCを行う。術後13時間で胆汁瘻を確認。CTにて胆汁の溜まりは認めなかったが、術中に留置したペンローズドレーンからの排液(胆汁)が多いため、ENBD施行。胆汁瘻の責任部位は不明であった。ENBD後8日で胆汁瘻治癒。<症例3>80才、女性。胆嚢結石、胆嚢炎にてLCを行う。PTGBDあり。術後17時間で胆汁瘻を確認。術中に留置したドレーンで管理していたが、胆汁瘻が改善せず、ENBD施行。胆嚢管の断端からの胆汁瘻であった。ENBD後17日で胆汁瘻治癒。【結語】術後胆汁瘻の治療はドレーンの管理が基本であるが、当科では重度の胆道損傷が疑われた場合は診断と治療を兼ねたENBDを考慮している。今回の検討では再手術症例がなかったが、ENBDを施行することで胆汁瘻の責任部位は明らかになることが多く、適切な評価とENBDチューブの管理により、術後胆汁瘻は治療が可能であった。しかし、手術直後の状態の患者であることや、ENBD施行における合併症も考慮しなくてはならず、胆汁瘻を生じた全症例に施行するのは難がある。今後、症例を蓄積して、ENBD施行の適応基準のさらなる見直しが必要と思われた。 |