セッション情報 シンポジウム 「胃癌2013 -検診・診断・治療のup to date-」

タイトル S-05:

長期成績から見た早期胃癌に対する内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)の有用性

演者 八田 和久(東北大学病院 消化器内科)
共同演者 小池 智幸(東北大学病院 消化器内科), 荒 誠之(東北大学病院 消化器内科), 阿見 麗子(東北大学病院 消化器内科), 齋藤 真弘(東北大学病院 消化器内科), 鳥畑 勇大(東北大学病院 消化器内科), 榛澤 崇(東北大学病院 消化器内科), 三上 哲彦(東北大学病院 消化器内科), 村田 次啓(東北大学病院 消化器内科), 近藤 穣(東北大学病院 消化器内科), 遠藤 博之(東北大学病院 消化器内科), 浅野 直喜(東北大学病院 消化器内科), 飯島 克則(東北大学病院 消化器内科), 今谷 晃(東北大学病院 消化器内科), 下瀬川 徹(東北大学病院 消化器内科)
抄録 【目的】早期胃癌に対するESDの技術確立とともに内視鏡治療の適応も拡大されてきている。当院におけるESDの長期成績を明らかにすることを目的とした。【方法】2003年6月から2008年3月までに当院で早期胃癌に対してESDを施行した235症例260病変のうち、5年以上経過観察が可能であった228症例を対象とした(追跡率97.0%)。絶対適応病変(A群、79例)、適応拡大病変(B群、104例)、適応外病変(C群、45例)に分類し、1)局所再発率、2)異時性多発癌発生率(治療1年以上経過後の発見)、3)リンパ節転移・遠隔転移再発率、4)生命予後を検討した。また、C群については、追加外科手術の有無、その後の経過についても検討した。尚、当院ではESD後1、3、6、12ヶ月の間隔で内視鏡での経過観察を行っている。【成績】観察期間中央値69ヶ月(2~119ヶ月)、男性/女性=180/48例、年齢中央値69歳(37~88歳)であった。1)局所再発率はA: 0%(0/79)、B:1.9%(2/104)、C:4.4%(2/45)であった。2)異時性多発癌発生率はA:8.9%(7/79)、B:13.5%(14/104)、C(胃全摘術後除く):7.5%(3/40)であり、このうち17例で内視鏡治療、6例で外科手術を施行し、1例では高齢のため緩和医療となった。外科切除例のうち病理にて内視鏡治療適応外病変であった3例は、全て前回内視鏡より12ヶ月以内に発見された病変であった。3)C群1例(2.2%)で53ヶ月後に肝転移を認めた。4)5年生存率はA:87.3%(69/79)、B:93.3%(97/104)、C:80.0%(36/45)であり、原病死はC群1例で認めた。その他の死因としては、他臓器癌14例、呼吸器・循環器疾患6例、その他5例であった。C群をさらに追加外科手術の有無で分類した場合、5年生存率は手術群で95.0%(19/20)、非手術群で68.0%(17/25) であった。また、外科手術切除標本の15%(3/20)にリンパ節転移所見を認めた。【結論】概ねガイドラインの妥当性を支持する結果であったが、異時性多発癌に対して外科手術を必要とする例も複数認められ、より慎重な経過観察を要する。また、致死的な他臓器癌を併発する確率が高く、他臓器癌のサーベイランスも重要である。
索引用語 早期胃癌, ESD