セッション情報 特別企画 後期研修医(卒後3-6年迄)

タイトル W-15:

止血に難渋した出血性十二指腸潰瘍を契機に発見された後天性血友病Aの1例

演者 高宮 秀式(岩手医科大学 医学部 消化器肝臓内科)
共同演者 久多良 徳彦(岩手医科大学 医学部 消化器肝臓内科), 佐藤 尚子(岩手医科大学 医学部 消化器肝臓内科), 山本 一成(岩手医科大学 医学部 消化器肝臓内科), 亀井 将人(岩手医科大学 医学部 消化器肝臓内科), 小豆嶋 立頼(岩手医科大学 医学部 消化器肝臓内科), 横山 直記(岩手医科大学 医学部 消化器肝臓内科), 小坂 崇(岩手医科大学 医学部 消化器肝臓内科), 赤坂 理三郎(岩手医科大学 医学部 消化器肝臓内科), 佐原 圭(岩手医科大学 医学部 消化器肝臓内科), 柴田 将(岩手医科大学 医学部 消化器肝臓内科), 安孫子 幸人(岩手医科大学 医学部 消化器肝臓内科), 小穴 修平(岩手医科大学 医学部 消化器肝臓内科), 遠藤 昌樹(岩手医科大学 医学部 消化器肝臓内科), 廣田 茂(岩手医科大学 医学部 消化器肝臓内科), 千葉 俊美(岩手医科大学 医学部 消化器肝臓内科), 滝川 康裕(岩手医科大学 医学部 消化器肝臓内科), 伊東 薫樹(岩手医科大学 医学部 消化器肝臓内科), 鈴木 一幸(岩手医科大学 医学部 消化器肝臓内科)
抄録 【症例】77歳男性【主訴】黒色便【既往歴】63歳:C型慢性肝炎【現病歴】左腋窩軟部腫瘍の診断で当院整形外科通院中,平成24年10月頃より静脈注射時皮下血腫,黒色便,貧血を認め,消化管出血の疑いで当科紹介入院となった.【経過】血圧102/60 mmHg,脈拍 96回/分, SpO2 97%,赤血球239万,Hb 8.0 g/dL,皮下出血や血腫は認めなかった.緊急上部消化管内視鏡検査で十二指腸前後壁に露出血管を伴うForrestIIaのA1 stage潰瘍が認められ,内視鏡的止血術を施行した。絶食,補液,PPI投与を行ったが,潰瘍からの出血を繰り返し,計9回の内視鏡的止血術と計4回のカテーテル動脈塞栓術を要した.APTT62.7秒、APTT-R2.06と延長し,第VIII凝固因子活性が5%と低下、抗第VIII凝固因子抗体陽性より後天性血友病Aと診断した.しかし,クロスミキシング試験は凝固因子欠乏型、IgG 1709 mg/dL, IgG4 130 mg/dLであった.後天性血友病A診療ガイドラインに基づき,第VIII凝固因子の高用量投与とシクロスポリンによる免疫抑制療法を行い、APTT-Rは2.73から1.56まで改善した。以後、十二指腸潰瘍からの出血は認められず退院となった.【考察】後天性血友病Aは、抗第VIII凝固因子抗体の出現により血友病類似の病状を呈する疾患である.その頻度は100万人に1人で50歳以上の高齢者が約73%を占め、約87%に重篤な出血を合併すると報告されている.また、出血の特徴として広範囲な皮下出血や筋肉内出血が多いといわれており、消化管出血は稀とされている.本症例では、悪性腫瘍、自己免疫疾患などの高頻度にみられる基礎疾患は認めなかった.【結語】後天性血友病Aにより十二指腸潰瘍からの出血を繰り返した1例を報告した.凝固検査異常の速やかな診断が重要と思われた.
索引用語 後天性血友病A, 十二指腸潰瘍