セッション情報 シンポジウム 「胃癌2013 -検診・診断・治療のup to date-」

タイトル S-06:

高粘稠局注剤カルボキシメチルセルロースを用いたトレーニーでも安全な胃ESD

演者 渡辺 晃(福島県立医科大学医学部 消化器・リウマチ膠原病内科学講座)
共同演者 引地 拓人(福島県立医科大学附属病院 内視鏡診療部), 佐藤 匡記(福島県立医科大学医学部 消化器・リウマチ膠原病内科学講座), 中村 純(福島県立医科大学医学部 消化器・リウマチ膠原病内科学講座), 高木 忠之(福島県立医科大学医学部 消化器・リウマチ膠原病内科学講座), 杉本 充(福島県立医科大学医学部 消化器・リウマチ膠原病内科学講座), 藁谷 雄一(福島県立医科大学医学部 消化器・リウマチ膠原病内科学講座), 菊地 眸(福島県立医科大学医学部 消化器・リウマチ膠原病内科学講座), 紺野 直紀(福島県立医科大学医学部 消化器・リウマチ膠原病内科学講座), 山崎 雅弘(九州労災病院 門司メディカルセンター 消化器内科), 小原 勝敏(福島県立医科大学附属病院 内視鏡診療部), 大平 弘正(福島県立医科大学医学部 消化器・リウマチ膠原病内科学講座)
抄録 【目的】ESDはトレーニーにとって難易度が高く習得に時間を要するが,その要因として粘膜下層の剥離が困難であることがあげられる.粘膜下層の剥離を安全に行うためには,局注により粘膜下層を十分に膨隆させることと,血管を視認し,出血させる前に予防的止血をすることが望まれる.そこで当院では,高粘稠局注剤であるカルボキシメチルセルロース(sodium carboxymethylcellulose: SCMC)を用いたESD(ESD-SCMC)を施行している.トレーニーにおける胃ESD-SCMCの有用性を検討した.【方法】ESD-SCMCはヒアルロン酸の局注による全周性の粘膜切開とトリミング後に,粘膜下層に1.5%SCMCを局注しITナイフ2を用いて剥離を行った. 2011年10月から2013年4月にESD経験100例未満の医師(トレーニー)2名が術者としてESD-SCMCを施行した胃腫瘍98例をS群,2009年4月から2010年3月にESD経験100例以上の医師(指導医)2名が術者として局注にヒアルロン酸のみを用いた79例をH群とした.治療成績をS群とH群で比較検討し,またS群のSCMC局注後の術中出血回数と止血時間を検討した.【結果】S群:H群で腫瘍局在(U/M/L)は27/38/33:14/34/31,深達度(m/sm1/sm2以深)は84/4/10:69/6/4, 切除標本長径(mm)は40.8:40.3で差はなかった.切除時間(分))は75.3:79.9, 完全一括切除率(%)は97.0:97.5で差はなかった.偶発症は後出血(%)4.0:6.3,穿孔(%)は1.0:2.5で差はなかった.SCMC局注後の出血回数は1.92回,止血時間は144秒であった.【結論】ESD-SCMCはトレーニーが施行しても,指導医と同様に安全に施行可能であった.SCMCによる粘膜下層の高い膨隆下での安全な剥離と良好な血管視認性により出血させる前に予防的止血ができたことがその要因と思われた.ESD-SCMCはトレーニーが胃ESDを安全に習得する上で有用であることが示唆された.
索引用語 ESD, 早期胃癌