共同演者 |
及川 寛太(岩手医科大学 内科学講座 消化器・肝臓内科分野), 及川 純子(岩手医科大学 内科学講座 消化器・肝臓内科分野), 滝川 康裕(岩手医科大学 内科学講座 消化器・肝臓内科分野), 高原 武志(岩手医科大学 外科学講座), 新田 浩幸(岩手医科大学 外科学講座), 佐々木 章(岩手医科大学 外科学講座), 須藤 隆之(盛岡市立病院 外科), 石田 和之(岩手医科大学 病理学講座 分子診断病理学分野) |
抄録 |
孤立性線維性腫瘍(Solitary fibrous tumor:SFT)は紡錘形の間質由来細胞が増生する比較的稀な腫瘍で胸膜由来の報告が多い. 近年, さまざまな実質臓器に由来するSFTの報告が散見されるようになったが, 膵臓に発生することは稀である.今回われわれは術前診断に苦慮した膵原発SFTを経験したので報告する. 症例は73歳, 男性. 2012年10月に心窩部不快感を主訴に近医受診.腹部超音波検査で膵体部腫瘤を認め, 精査目的で当科紹介となった.身体診察では,右上腹部に可動性に乏しい弾性軟の腫瘤を触知した.腫瘍マーカーは,CA19-9,CEA, NCC-ST-439,DUPAN-2,Span-1,可溶性IL-2Rいずれも正常値であった.超音波検査で膵体部に径50mmの低エコー腫瘤を認め, 内部には高エコー域も伴い,豊富な血流信号を認めた.腫瘤より尾側の主膵管の拡張を認めた. 腹部造影CTおよび MRIで腫瘤は動脈相から不均一に造影された.充実性多血性腫瘤の所見から,GIST,神経内分泌腫瘍などが考えられたが,確定診断には至らなかった.PET-CTでは,腫瘤のFDG集積は乏しかった.超音波内視鏡検査で,腫瘤は膵体部との境界が不明瞭な一方で,腫瘤と接する部位の胃の漿膜層は明瞭に描出されたことから,膵由来腫瘤と診断した.膵臓原発の無症候性膵神経内分泌腫瘍ないしはanaplastic pancreatic cancerと術前診断し, 腹腔鏡下膵体部腫瘍切除術を施行した.病理所見は,肉眼的に膵臓に接して外方へ突出する腫瘍で,境界は明瞭で線維性の被膜構造を有していた.組織学的には,短紡錐形細胞が細かな錯綜配列をもって増殖しており,血管周囲に腫瘍細胞が増殖するstaghorn appearanceも認められた.免疫染色では, CD34(+), Vimentin(+), Cytokeratin(-),また, Mib1陽性細胞が8%であり, 増殖性を有する良性の膵 SFTと診断された.結語:膵原発の良性SFTの手術例を報告した.術前の質的診断は困難であったが,由来臓器の診断には超音波内視鏡が有用であった. |