セッション情報 一般演題

タイトル O-06:

MALTリンパ腫との鑑別を要したAFP産生胃癌の一例

演者 小林 茂之(岩手県立磐井病院 消化器科)
共同演者 飛澤 笑山(岩手県立磐井病院 消化器科), 横沢 聡(岩手県立磐井病院 消化器科), 菅野 記豊(岩手県立磐井病院 消化器科)
抄録 【症例】78歳男性【既往歴】なし【現病歴】食欲低下を訴えて市中病院を受診、上部消化管内視鏡検査で腫瘍を指摘、CTで胃周囲に腫大リンパ節を指摘され、胃癌や胃MALTリンパ腫が疑われたため精査加療目的に紹介となった。当院での内視鏡検査で体下部から前庭部にかけて、小彎側を中心として3/4周性に、一部表面に白苔を伴う不整な潰瘍底を持つBorman3型腫瘍を認めた。生検はGroup5(低分化型腺癌)。CTで胃体下部の肥厚と胃周囲、左鎖骨上、左腋窩に著明なリンパ節腫大を認めた。左内頚静脈、左鎖骨下静脈の血栓閉塞も認めたが、肺転移、肝転移は認められなかった。CEA、CA19-9の上昇は軽度で、SIL2レセプターも軽度上昇だった。AFP:254ng/mlが確認され、AFP産生胃癌の診断とした。StageIVの評価で化学療法を施行することになり、SP療法(TS-1 80mg/m2+CDDP 60mg/m2)開始となった。現在2クール目施行中である。【考察】AFP産生胃癌は全胃癌の2~9%と頻度は低く、肉眼的にはBorman2、3型の進行癌が多く、脈管侵襲や肝転移、リンパ節転移が多いと報告されている。また、胃癌術後の標本の検討でAFP産生胃癌と診断される例が多い。通常の胃癌よりも予後が悪く、5年生存率は11.6%、平均生存期間は13.5ヶ月とされている。全身化学療法としてはSP療法、FEP療法、CPT11/CDDP療法などが有効とされ、化学療法が奏功して外科的切除を得た例や長期予後を得た例も報告されているが、治療法は確立していない。【結語】MALTリンパ腫との鑑別に苦慮した、肝転移を認めないAFP産生胃癌を経験した。全胃癌の中では頻度の低い病態ではあるが、治療方針、予後の予測等においては有用な診断となるので念頭に置く必要がある病態である。
索引用語 胃癌, AFP産生腫瘍