抄録 |
症例は40歳代、男性。他院で胃癌に対して胃全摘術、D1+β郭清、double tract再建を施行した(U, Less, Type0-IIc, por1, pT1b2(pSM2), med, INFb, ly1, v0, pN0, pStageIA, 根治度A)。7年6か月後に、食欲不振、嘔気、下腹部膨満を主訴に当科を受診した。CEA 17.9 ng/ml, CA19-9 163.2 U/mlと腫瘍マーカーの上昇を認め、CTで腹腔動脈根部に軟部陰影、胸腹水を認めた。腹水細胞診でSignet-ring cell carcinomaの診断であった。胃癌術後再発、癌性腹膜炎の診断で化学療法を行うこととなった。一次治療として、S-1(80mg/m2,day1-21)+CDDP(60mg/m2, day8)を開始した。3コース施行後、腹水増加、腸間膜の濃度上昇、腹腔内小結節の増大があり、weekly paclitaxel(80mg/m2, day1,8,15 q4w)に変更した。変更後G-3の好中球減少とG-3の口腔粘膜炎を認めたため、適宜、休薬や減量を行いながら治療を継続した。paclitaxel投与開始から5か月後、胸腹水の消失が認められCRが得られた。ご本人の強い希望により、以後化学療法は行わず、経過をみることとなった。paclitaxel最終投与から1年9か月後、絞扼性イレウスで開腹手術施行、その際の腹水細胞診では癌細胞は認めなかった。現在paclitaxel最終投与から2年7か月経過しており、再発所見なく、腫瘍マーカーは正常化している。二次治療として、paclitaxelが奏効し、長期CRが得られている、胃癌術後再発、癌性腹膜炎の症例を経験したので、若干の文献的考察を加え報告する。 |