セッション情報 一般演題

タイトル O-33:

直腸脱治療における困難症例

演者 片山 原子(JR東京総合病院 消化器外科)
共同演者 尾辻 和尊(JR東京総合病院 消化器外科), 小山 要(JR東京総合病院 消化器外科), 平田 勝(JR東京総合病院 消化器外科)
抄録 【背景】直腸脱は、一般外科・消化器外科領域においては、common diseaseのひとつであるものの、その発生頻度は比較的低い。本邦では、大腸肛門病領域を専門とする外科医でなくても、一般外科・消化器外科領域の外科医において、低侵襲の本邦独特の術式で対応を行っていることが多い。この術式は、再発の際も同じ術式での処置が追加できる場合が多い。しかし、低侵襲の術式で再発して苦労するケースも出てくる。今回、苦労したケースをreviewし、今後の参考となれば幸いである。【症例】78歳女性。2011年8月頃より肛門痛があり、近医からの紹介で2011年11月当科初診された。直腸脱を認め、手術適応であるものの、高度の脊柱後弯を認め、歩行するのがやっとの、ADL低下を認めた状態であったため、経過観察となった。その後、排便の調節ができず、失禁の状態で、本人は手術を希望され、2012年1月再診された。脊椎は、高度の後弯を認める状態で、直腸は肛門より10cmほどの完全な直腸脱を認めた。低侵襲の術式から開始する方針で、同月、会陰アプローチで腸管切除を伴わない、Gant-Miwa-Thiersch法を施行した。術後2週間で再発し、5cmほどの直腸脱を認めた。2月にGant-Miwa-Thiersch法を追加して施行したが、術後4週間で再発した。再発を繰り返すため、会陰アプローチで腸管切除を伴う方式を予定し、5月にAltemeier法を施行した。術後6カ月は良好な状態が過ごせたが、12月に直腸が再度脱出し、2日経過してから受診された。肛門より腸管が大きく脱出し、一部は漿膜面も露出し、体外にて腸管穿孔を伴い、S状結腸の大部分が脱出した状態であった。緊急手術で、全身麻酔下に、開腹および会陰アプローチにて、脱出腸管の切除と下行結腸人工肛門造設を施行した。術後、ARDSになり、集中管理を要したが、術後75日にて退院できた。【結語】直腸脱に対する術式は、侵襲の大きさと治療効果の2つの側面から、症例に応じてよく検討して選択する必要があるが、今回の経験より、poor riskの症例においても、直腸脱の状態によっては、治療効果の方に今まで以上に大きな比重をおく必要があることが示唆された。
索引用語 直腸脱, 再発