セッション情報 シンポジウム 「胃癌2013 -検診・診断・治療のup to date-」

タイトル S-11:

除菌後胃癌の臨床病理学的特徴

演者 千葉 大輔(津軽保健生活協同組合 健生病院 内科DELIMITER弘前大学大学院医学研究科 消化器血液内科学講座)
共同演者 下山 克(弘前大学大学院医学研究科 消化器血液内科学講座), 高杉 かおり(弘前大学大学院医学研究科 消化器血液内科学講座), 澤谷 学(弘前大学大学院医学研究科 消化器血液内科学講座), 珍田 大輔(弘前大学大学院医学研究科 消化器血液内科学講座), 花畑 憲洋(弘前大学大学院医学研究科 地域医療学講座), 三上 達也(弘前大学医学部附属病院 光学医療診療部), 鬼島 宏(弘前大学大学院医学研究科 病理生命科学), 福田 眞作(弘前大学大学院医学研究科 消化器血液内科学講座DELIMITER弘前大学大学院医学研究科 地域医療学講座DELIMITER弘前大学医学部附属病院 光学医療診療部)
抄録 【目的】H. pyloriの除菌は胃癌発生を抑制するとされ、最近、H. pylori感染胃炎に対する除菌治療が保険適用となった。しかし、H. pylori除菌後にも胃癌は発生し、通常胃癌と異なる特徴を有することも報告されており、今後の除菌の普及によりそのような胃癌が増加すると考えられる。そこで、H. pylori除菌後胃癌の内視鏡的及び臨床病理学的特徴について検討した。【方法】2009年から2012年12月までの期間に、弘前大学医学部附属病院で内視鏡的粘膜下層剥離術を施行された早期胃癌症例175症例のうち、H. pylori除菌後1年以上経過して発見された早期胃癌5症例(男性4、女性1症例、平均年齢:65.8歳)、8病変について検討した。粘液形質の判定は胃型マーカーとしてMUC5AC、MUC6、HGMを腸型マーカーとしてMUC2、CDX2、CD10を用いた。【結果】除菌後胃癌8病変のうち肉眼型は隆起型3病変 (37%)、平坦/陥凹型 5病変 (63%)であった。腫瘍発生部位はM領域に2病変、L領域に6病変であり、U領域での発生は認めなかった。8病変のうち7病変が高分化腺癌主体の病変であったが、1病変に低分化腺組織の混在を認めた。粘液形質の検討では腸型 3病変、胃型 2病変、混合型 3例 (そのうち胃型優位1例)であった。【考察】除菌後胃癌は通常の胃癌に比べ早期癌、分化型癌、陥凹型の割合が高いとされているが、今回の検討でも同様の傾向にあるといえる。発生部位はUM領域に多いとする報告もあるが当院ではML領域に多かった。H. pylori除菌により、胃癌の発育過程における粘液形質の腸型化が抑制され、除菌後胃癌の粘液形質は胃型形質が優位であることが多いとされている。今回の検討では除菌後胃癌全体でみると、混合型を含めて胃型形質優位の胃癌は3病変 (38%)であった。しかしながら除菌後10年以上経過した除菌後胃癌2病変はいずれも粘液形質は胃型形質であり、除菌により腸型化が抑制されている可能性が示唆された。
索引用語 除菌後胃癌, 粘液形質