共同演者 |
湯川 友貴(みやぎ県南中核病院 消化器内科), 高橋 貴一(みやぎ県南中核病院 消化器内科), 油井 理恵子(みやぎ県南中核病院 消化器内科), 玉川 空樹(みやぎ県南中核病院 消化器内科), 洞口 愛(みやぎ県南中核病院 消化器内科), 阿曽沼 祥(みやぎ県南中核病院 消化器内科), 梅村 賢(みやぎ県南中核病院 消化器内科), 飯岡 佳彦(みやぎ県南中核病院 消化器内科), 大沼 勝(みやぎ県南中核病院 消化器内科), 三浦 雅人(みやぎ県南中核病院 消化器内科) |
抄録 |
【症例】84歳男性【主訴】感冒様症状【既往歴】2007年頸椎手術(輸血歴なし)【現病歴】2013年3月自宅近くの精肉店で豚生レバーを購入し自宅で焼いて食べた。4月になり全身倦怠感、食欲不振などの症状が出現し近医受診。感冒の診断で内服薬が処方されたが症状改善せず。採血したところAST1874U/l、ALT1722U/lと著明な肝機能障害を認めたため当科紹介。急性肝炎の診断で同日当科入院。【入院時現症】身長164.5cm,体重49.4kg,血圧132/84mmHg,脈拍72bpm,体温36.4℃【入院時検査成績】WBC5900/μl,RBC430万/μl,Hb14.0g/dl,Plt22.9万/μl,CRP1.45mg/dl,T-Bil4.70mg/dl,AST1486U/l,ALT1726U/l,LDH496U/l,ALP462U/l,γGTP329U/l,PT56.4%【ウイルスマーカー】HBs抗原(-),HCV抗体(-)IgM-HA抗体(-),IgM-HBc抗体(-),IgA-HEV抗体(+)【経過】ウイルスマーカーの結果よりE型急性肝炎と診断。高齢者でありPTの結果から重症化の可能性も考えられたため、PSLを40mg/日より漸減しながら7日間投与したところ肝機能は順調に改善し第23病日に退院。【考察】自治医科大学などの共同研究チームが2002年~2003年に実施した調査では、北海道の食料品店で市販されていた包装済みの豚生レバー363件中7件(1.9%)からHEV遺伝子が検出され、そのひとつは患者から分離されたHEVと遺伝子配列が100%一致したと報告(Journal of General Virology,2003)。このことは市販の豚レバーを摂食することによりE型肝炎に感染する可能性があることを示しており、日常診療で急性肝炎に遭遇した場合、食歴の聴取が極めて重要であると考えられた。また、本症例と一緒に豚レバーを食べた妻(85歳)は検査の結果感染が成立していなかったが、妻は十分に加熱されたもののみ食べたということであった。【まとめ】牛レバ刺しが大腸菌O-157の問題で飲食店での提供が禁止となって以来、豚の生レバーを提供する店が増えていると報道されている。しかし、E型肝炎により重症化し死亡する恐れがあるため、生食を禁止することはもちろん十分に加熱調理することを啓蒙する必要があると考えられた。 |