セッション情報 特別企画 後期研修医(卒後3-6年迄)

タイトル W-17:

肺動脈閉鎖症の術後経過中に多発肝腫瘍を認めた小児の1例

演者 今泉 博道(福島県立医科大学 消化器・リウマチ膠原病内科)
共同演者 林 学(福島県立医科大学 消化器・リウマチ膠原病内科), 岡井 研(福島県立医科大学 消化器・リウマチ膠原病内科), 菅野 有紀子(福島県立医科大学 消化器・リウマチ膠原病内科), 阿部 和道(福島県立医科大学 消化器・リウマチ膠原病内科), 高橋 敦史(福島県立医科大学 消化器・リウマチ膠原病内科), 青柳 良倫(福島県立医科大学 小児科), 大平 弘正(福島県立医科大学 消化器・リウマチ膠原病内科)
抄録 【症例】8歳、男性【主訴】なし【既往歴】0歳:肺動脈閉鎖症にて体肺動脈短絡術、1歳:両方向性グレン手術、2歳:フォンタン手術、輸血歴あり。【現病歴】出生時に肺動脈閉鎖症診断され、手術後は状態が安定し近医で経過観察されており、2007年11月の単純CTでは肝内に腫瘍を認めなかった。2013年1月手指のチアノーゼの原因検索目的の造影CTで肝内に腫瘍が多発しており、同年2月精査目的で当科紹介となった。【経過】血液検査では軽度肝機能異常(AST 45U/l、γ-GTP 184U/l)と高アンモニア血症(103μg/dl)を認めたが、肝炎ウイルスと腫瘍マーカーは陰性であった。腹部超音波検査では肝両葉に境界明瞭で内部が高エコーを呈する肝腫瘍を数個認め、最大径は肝右葉後区域の62mmであった。腫瘍は造影CT動脈相で部分的に淡く造影され、平衡相でwash outされ、MRIではT2強調像で低信号を呈し、EOB造影の肝細胞相では周囲肝よりEOBの取り込みは強く、欠損は認めなかった。また、腹部動脈造影検査では腫瘍濃染を認めなかった。さらに、上腸間膜動脈造影では門脈が描出されず、造影剤は細い側副血行路から脾腎シャントを経由後に下大静脈へ流入し、門脈欠損症の診断に至った。肝腫瘍の病理組織所見は、腫瘍の構成細胞は軽度腫大傾向を示すも異型は認めず、配列・走行が若干不規則で門脈域が欠如しており、最終診断は限局性結節性過形成(FNH)であった。【考察】門脈欠損症は稀な疾患であるが先天性心疾患の半数に合併する。さらに門脈欠損症の中には肝腫瘍を合併する場合があり、その48%がFNHあると報告されている。本症例は、門脈欠損症に伴う肝内血行動態の変化により多発FNHが形成されたと考えられた。小児、特に先天性心疾患の既往症例で肝腫瘍を認めた場合、先天性門脈欠損症の存在を考慮する必要がある。【結語】先天性門脈欠損症に伴うFNHの比較的稀な1例を経験したので文献的考察を加えて報告する。
索引用語 先天性門脈欠損症, 限局性結節性過形成