セッション情報 シンポジウム 「胃癌2013 -検診・診断・治療のup to date-」

タイトル S-09:

未分化型早期胃癌に対するESD成績と問題点の検討

演者 石山 文威(岩手県立胆沢病院 消化器内科)
共同演者 市川 遼(岩手県立胆沢病院 消化器内科), 永井 博(岩手県立胆沢病院 消化器内科), 下山 雄丞(岩手県立胆沢病院 消化器内科), 諸井 林太郎(岩手県立胆沢病院 消化器内科), 木村 智哉(岩手県立胆沢病院 消化器内科), 矢口 圭(岩手県立胆沢病院 消化器内科), 萱場 尚一(岩手県立胆沢病院 消化器内科)
抄録 【目的】20mm以下のUL(-)未分化型粘膜内癌はリンパ節転移のリスクが低く、近年内視鏡的切除の適応拡大が進められている。今回、当科における未分化型早期胃癌に対する治療成績について検討した。
【方法】対象は2008年1月~2013年1月の間、術前生検にて未分化型成分を認め、かつ20mm以下のUL(-)の粘膜内癌と診断しESDを施行した9例(30-77歳、年齢中央値67歳)。これらの症例に関して性別、腫瘍径、肉眼型、組織型、深達度、腫瘍内潰瘍の有無、リンパ管および脈管侵襲の有無、切除率、偶発症などについて検討した。
【結果】性別は男性6例、女性3例、平均腫瘍径18mm、肉眼型はIIc型7例、IIb型1例、IIc+IIb型1例であった。組織型はsig5例、por4例であった。深達度は粘膜内癌6例(66.6%)、粘膜下層浸潤癌3例(33.3%)、そのうちsm2浸潤1例であった。UL並びにリンパ管侵襲は全例において認めなかったが、脈管侵襲を1例に認めた。一括完全切除率は9/9(100%)、穿孔や後出血などの偶発症は全ての症例において認めなかった。脈管侵襲陽性かつ粘膜下層浸潤癌の1例、粘膜下層浸潤癌の2例、腫瘍径が20mmを超えた1例、計4例において追加外科手術が施行されたが、リンパ節転移を認めた症例はなかった。ほか経過観察中に遺残・再発を認めた症例はなかった。
【結論】脈管侵襲はsm2の1例に認めたが、それ以外の症例では認めず、腫瘍径20mm以下のUL(-)の未分化型粘膜内癌に対するESDは、治療手技として分化型癌と同様に施行可能であった。範囲診断に関しては、術前に診断した範囲から5mm以上距離を置いた部位にマーキングをおき、その外側を切除することで高い一括完全切除率が得られた。しかしながら、術前粘膜内癌と診断した8例中2例に粘膜下層浸潤を認め、深達度診断は分化型胃癌と比較し正診率が低く、術前深達度診断を慎重に行うことが必要であり今後の課題である。20mm以下のUL(-)未分化型粘膜内癌に対するESDは適応拡大として容認される可能性が示唆された。今後さらなる症例の集積と長期の経過観察が必要である。
索引用語 未分化型早期胃癌, ESD