セッション情報 シンポジウム 「胃癌2013 -検診・診断・治療のup to date-」

タイトル S-13:

消化管出血を契機として発見され内視鏡的止血術を施行した胃癌症例の検討

演者 川口 章吾(青森市民病院 消化器内科DELIMITER弘前大学大学院医学研究科 消化器血液内科学講座)
共同演者 吉村 徹郎(青森市民病院 消化器内科DELIMITER弘前大学大学院医学研究科 消化器血液内科学講座), 五十嵐 剛(青森市民病院 消化器内科DELIMITER弘前大学大学院医学研究科 消化器血液内科学講座), 和田 豊人(青森市民病院 消化器内科), 福田 眞作(弘前大学大学院医学研究科 消化器血液内科学講座)
抄録 【目的】上部消化管出血に対する緊急内視鏡検査で診断された疾患のうち、胃腫瘍の頻度は約5%とされている。消化管出血をきたして内視鏡的止血術を行った胃癌症例の臨床的特徴を明らかにすることを目的とした。【対象】平成23年4月1日から25年3月31日までに消化管出血を主訴として当院を受診し、非静脈瘤性の上部消化管出血として内視鏡的止血術を行ったのは140例であった。このうち最終診断が胃癌であった15例(男性11例、女性4例、平均年齢69.9歳)を対象とした。【方法】病変の局在、肉眼型、初回内視鏡診断、止血法、確定診断までの期間と内視鏡検査の回数、治療と予後について後ろ向きに検討した。【結果】病変の局在はU領域5例、M領域10例であった。肉眼型は3型10例、2型3例、0-IIb+IIcと0-IIa+IIcが1例ずつであった。初回の内視鏡診断は、15例中9例が出血性胃潰瘍であった。止血法はSoft凝固などの熱凝固法7例、エタノール局注法4例、クリップ法1例、いずれかの併用療法3例であった。止血は15例中14例(93.3%)で可能であった。初回の内視鏡診断が出血性胃潰瘍であった9例では確定診断までに平均14日(1-31日)を要し、診断までの内視鏡回数は平均2.8回(2-4回)であった。治療は12例が外科手術(幽門側胃切除6例、胃全摘6例)、1例ESD、2例はbest supportive careであった。手術が施行された13例のStageは、IA1例、IB2例、IIB1例、IIIA3例、IIIB1例、IIIC4例、IV1例と高度進行例が多く、経過中8か月以内に4例が永眠されていた。【考察】消化管出血をきたした胃癌においては、初回の緊急内視鏡では胃内の残渣の存在や、止血処置が重視される状況であるため、病変の詳細な観察が困難であることが多い。腫瘍性病変と認識できないことも多く、その後診断確定までに時間を要することもある。今回の検討では進行例が多く、予後も悪いことから、早期の診断と治療が必要と考えられた。また、内視鏡的止血術は腫瘍出血についても良好な一時止血が可能であった。
索引用語 胃癌, 消化管出血