セッション情報 シンポジウム 「胃癌2013 -検診・診断・治療のup to date-」

タイトル S-14:

今後増加が予想される上部限局胃癌(GC-U)に対する噴門側胃切除のhistorical data からみた妥当性

演者 山下 直行(坪井病院 外科)
共同演者 湖山 信篤(坪井病院 外科), 上田 康二(坪井病院 外科), 保田 智彦(坪井病院 外科), 萩原 信敏(日本医大 消化器外科), 内田 英二(日本医大 消化器外科)
抄録 胃切除の再建は切除範囲と同時に評価するべき.上部胃癌は増加が予想され,噴門側胃切除も十分に考慮すべき.2001~上部限局胃癌(GC-U)に迷走神経温存胃漿膜筋層縦切開噴門形成術(NP-EGP)をcMPN0までを対象に31例に施行(文献1:手術61:13,1861-18682007)施行.その1)合併症,2)根治性,予後3)栄養学的評価,4)術後障害の状況,5)残胃癌の対処,6)問題点と課題を示す.【周術期,長期合併症】術後出血1例(迷走神経周囲のクーパーによる郭清).残胃停滞による食道炎, 経口摂取遅延1, 膵炎1, 3年後の術後イレウス1(癒着剥離術).【GC-Uの特徴】1984-2009までのSM以深の胃切除1618例を解析. 小彎偏在が多く(80%,MLは60%)と多いため,No.4d,5,6の郭清効果はNo.11p,d,10より低く,ないか,限定的.( 文献2:笹子他.手術52:737-743,1998でも同様の傾向) GC-UでNo.4d,5,6に転移のあった4例は全てNo.16,腹膜など他に非根治因子があり,2年以内に原病死.なお,No.4d転移が最も多い(28%)UM,MU病変と識別することが重要.【予後】再発はfStageIIIBのNo.16,腹膜と肝転移の2例で噴切特有の再発なし.【栄養学的評価】同時期の胃全摘(StageIA-B,D1+β郭清)症例とTP,alb,術前体重からの変化を比較.術後4年まで噴切89-91%,全摘87-88%.噴切で体重減少抑制傾向(有意差なし).【術後障害】2012までに施行の31例は鉄剤やVitB12を要せず,PPI投与は4例のみ. 術後6年以上経過した2006年の胃全摘32例中,再発,他病死なく追跡された15例中3例に低蛋白血症を伴うHb8以下の貧血発生. 鉄剤, VitB12の投与で改善.【残胃癌の対処】文献3(上西他.胃と腸1049-1057,2004)と同様, 残胃癌5症例,7病変は全て分化型でESDにてEA.残胃観察,ESD操作性に問題なし.【まとめ/課題 1)NP-EGPは長期的にも妥当な術式. 2)胃全摘の術後障害は無視出来ず,予後改善に伴い,進行癌でも低いStageから噴切を考慮するに価する.3)上部(U)に限局という,病変の局在診断が重要.4)今後,腹腔鏡手術の普及などから同様のqualityで再建するために創意工夫が必要.
索引用語 上部胃癌, 噴門側胃切除