セッション情報 特別企画 後期研修医(卒後3-6年迄)

タイトル O-26:

発症後4年の潰瘍性大腸炎に合併したcolitic cancerの1例

演者 小原 恵(東北大学病院 胃腸外科)
共同演者 羽根田 祥(東北大学病院 胃腸外科), 大沼 忍(東北大学病院 胃腸外科), 工藤 克昌(東北大学病院 胃腸外科), 神山 篤史(東北大学病院 胃腸外科), 長尾 宗紀(東北大学病院 胃腸外科), 田中 直樹(東北大学病院 胃腸外科), 佐々木 宏之(東北大学病院 胃腸外科), 青木 豪(東北大学病院 胃腸外科DELIMITER東北大学病院 肝胆膵外科), 唐澤 秀明(東北大学病院 胃腸外科), 阿部 友哉(東北大学病院 胃腸外科), 武者 宏昭(東北大学病院 胃腸外科), 森川 孝則(東北大学病院 胃腸外科DELIMITER東北大学病院 肝胆膵外科), 乙供 茂(東北大学病院 肝胆膵外科), 吉田 寛(東北大学病院 肝胆膵外科), 元井 冬彦(東北大学病院 肝胆膵外科), 内藤 剛(東北大学病院 胃腸外科DELIMITER東北大学病院 肝胆膵外科), 片寄 友(東北大学病院 肝胆膵外科), 柴田  近(東北大学病院 胃腸外科), 海野  倫明(東北大学病院 肝胆膵外科)
抄録 【症例】34歳女性。【既往歴】気管支喘息、Churg-Strauss症候群の疑い、慢性胆嚢炎、胆嚢結石症。【家族歴】特記事項なし。【現病歴】30歳時、腹痛、下痢を契機に前医で全大腸型の潰瘍性大腸炎と診断された。ステロイド強力静注療法に良く反応していたが、漸減に伴い再発を繰り返していた。約2年後タクロリムスを導入するも効果不十分で、インフリキシマブを投与するも効果なく中止となった。その後上下肢に発赤斑が多発したことから皮膚科を受診しChurg-Strauss症候群の疑いとなり、その治療もかねて、プレドニゾロンの内服を開始し、また、アザチオプリンも内服を開始した。皮膚症状に関してはその後軽快したが、大腸の炎症が高度でプレドニゾロンを減量できない状態が続いたため、当院消化器科を紹介受診し、相対的手術適応として当科紹介となった。術前の内視鏡では直腸から盲腸にかけて連続して発赤、潰瘍を認めたが腫瘍性の病変は認めなかった。全結腸から計9か所生検を施行したところ、下行結腸にdysplasiaと考えられる病変を認め、厚生労働省特定疾患難治性炎症性腸管障害調査研究班による病理組織学的分類に準ずるとUC‐IIb相当であった。その他の部位では悪性を示唆する病変は認めなかった。発症から約4年で全結大腸切除・直腸粘膜切除・J 型回腸嚢肛門吻合術、腹腔鏡下胆嚢摘出術を施行した。組織学的所見では横行結腸と直腸に高分化型腺癌を認め、大腸癌取扱い規約(第7版)でT, Rb, Adenocarcinoma(tub1), pSM, ly0, v0, n0, stage Iであった。【考察】本邦において、潰瘍性大腸炎に合併する colitic cancerの頻度は2.6 %と報告されており、長期の罹患期間と全大腸炎型であることがcolitic cancerの高危険群であることが知られている。患者の累積癌化率は10年経過症例で 1.6%、20年で8.3%、30年で18.4%との報告もあり、そのため8-10年以上経過した症例を対象にサーベイランス大腸内視鏡が行われるようになっている。本症例のように発症後4年という短期間で癌が判明することは稀であり、文献的考察を加えて報告する。
索引用語 潰瘍性大腸炎, colitic cancer