抄録 |
【症例】69歳、男性。【既往歴】糖尿病、高脂血症、高血圧。【現病歴】下部消化管の精査を希望し、平成23年7月に当科を受診した。初診時、自覚症状を認めず。【経過】下部消化管内視鏡検査において、肛門輪より20cmのS状結腸において、約10mm大の亜有茎性の隆起を認めた。病変の表面性状に明らかな上皮性の腫瘍性変化を示唆する所見を認めず、粘膜下腫瘍を想起させる内視鏡像であった。 超音波内視鏡(EUS)では、第III層の途中より超音波の減衰を認め、詳細な観察が困難であった。各種画像診断においても確定診断には至り得ず、診療経過において増大傾向も認めたことから、診断的治療としての切除が望ましいと考えられた。処置による穿孔の可能性について、十分なinformed consentを取得した上で、同年10月に入院の上、内視鏡的粘膜切除術を施行した。術後の合併症を認めず退院となった。切除標本の病理組織学的検討では、粘膜下に著明な血管を含む脂肪組織から成る充実性病変を認め、血管脂肪腫と診断した。【考按】医学中央雑誌を用いて検索したところ、過去30年間における大腸の血管脂肪腫の報告例は、自験例を含めて11例であった。うち、6例で内視鏡的切除、5例で外科的切除が施行されていたが、切除術前に確定診断された報告例を検索し得なかった。【結語】大腸血管脂肪腫の1例を経験した。本症の報告例の検討でも、典型的・特異的内視鏡所見についての報告は比較的少なく、今後症例を蓄積し、内視鏡所見およびEUS所見などのより詳細な検討を要すると思われた。 |