セッション情報 特別企画 初期研修医(卒後2年迄)

タイトル O-61:

十二指腸に痩孔を形成し近傍に出血性潰瘍を併発した膵仮性嚢胞の一例

演者 照井 洋輔(岩手県立中央病院 消化器科)
共同演者 池端 敦(岩手県立中央病院 消化器科), 吉田 直記(岩手県立中央病院 消化器科), 大方 英樹(岩手県立中央病院 消化器科), 阿部 康弘(岩手県立中央病院 消化器科), 横山 直信(岩手県立中央病院 消化器科), 松本 信(岩手県立中央病院 消化器科), 高橋 太郎(岩手県立中央病院 消化器科), 三浦 真奈美(岩手県立中央病院 消化器科), 小原 範之(岩手県立中央病院 消化器科), 城戸 治(岩手県立中央病院 消化器科), 村上 晶彦(岩手県立中央病院 内視鏡科), 天野 良彦(岩手県立中央病院 内視鏡科)
抄録 【症例】60歳代,男性.主訴:心窩部痛.家族歴:特になし.既往歴:20歳代,虫垂炎.嗜好:機会飲酒,喫煙20本・44年.現病歴:雪かき中に突然心窩部痛が出現した.症状が持続するため5時間後に当院を受診した.現症:血圧148/78mmHg,脈拍79/分.体温36.5度.貧血・黄疸なく,心窩部に圧痛がみられた.血液検査では白血球増加(13330/μl),高アミラーゼ血症(1453 IU/L)がみられた. CTでは膵全体の腫大,膵周囲の液体貯留,総胆管下部に結石影,少量の腹水がみられた.経過:総胆管結石による急性膵炎と診断し,ERCPが施行された.検査時は結石は明らかではなく胆管と膵管にステントを留置し終了した.第3病日のCTでは膵体部は造影不良域となり,液体貯留の増加もみられた.中心静脈栄養,ガベキサートメシル酸,ウリナスタチン,抗生剤などで治療が継続されたが,膵周囲に被包化液体貯留が形成された.第35病日のCTでは膵体部の造影不良域は縮小し仮性嚢胞もわずかに縮小がみられた.食事を開始後は順調に経過し第48病日に退院となった.退院3週後のCTでは仮性嚢胞の縮小と内部に空気像がみられ,消化管との交通が疑われた.この頃より食後に心窩部不快感を自覚するようになり,さらに退院7週後に黒色便がみられたため再入院となった.上部消化管内視鏡検査で十二指腸球部に湧出性出血を伴う潰瘍がみられ止血術が施行された.近傍には痩孔がみられた.処置後は良好に経過し退院となった.2ヵ月後のCTでは膵腫大は著明に改善し膵背側の嚢胞はさらに縮小していた.現在,外来で経過観察中である.【考察】急性膵炎の約10%で仮性嚢胞の形成が報告されている.その合併症は出血,感染,閉塞性黄疸など多岐にわたるが,隣接臓器への痩孔形成は比較的まれである.さらに本例では経過中に出血性十二指腸潰瘍の併発がみられた.穿破した嚢胞内液の膵酵素の活性化などが出血に関与したものと推測される.【結語】十二指腸に痩孔を形成し近傍に出血性潰瘍を併発した膵仮性嚢胞の一例を経験した.
索引用語 膵仮性嚢胞, 十二指腸穿通