セッション情報 特別企画 初期研修医(卒後2年迄)

タイトル O-56:

膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMN)由来と考えられた膵浸潤癌の一例

演者 植田 南(岩手県立中央病院 消化器科)
共同演者 池端 敦(岩手県立中央病院 消化器科), 大方 英樹(岩手県立中央病院 消化器科), 阿部 康弘(岩手県立中央病院 消化器科), 横山 直信(岩手県立中央病院 消化器科), 高橋 太郎(岩手県立中央病院 消化器科), 三浦 真奈美(岩手県立中央病院 消化器科), 小原 範之(岩手県立中央病院 消化器科), 城戸 治(岩手県立中央病院 消化器科), 臼田 昌弘(岩手県立中央病院 消化器外科), 小野 貞英(岩手県立中央病院 病理診断科), 村上 晶彦(岩手県立中央病院 内視鏡科), 天野 良彦(岩手県立中央病院 内視鏡科), 松本 信(岩手県立中央病院 内視鏡科)
抄録 【症例】50歳代,男性.主訴:黄疸.家族歴:特になし.既往歴:高血圧.嗜好:焼酎3合/日,喫煙なし.現病歴:1週間前から尿濃染,黄疸がみられ,皮膚掻痒感が強くなり,近医を受診した.黄疸の精査治療のため当科紹介となった.現症:眼球結膜の黄染がみられたが,腹部に圧痛や腫瘤はみられなかった.血液検査では著明な肝機能異常と,T-bil 13.8と高値であった.腫瘍マーカーはCEA 5.5 ng/ml,DUPAN-2 >1600 U/mlと高値であった.内視鏡検査では十二指腸下行脚に複数の粘液を産生する腫瘍がみられ外部からの浸潤が疑われた,生検では絨毛状に増殖する異型上皮がみられた.腫瘍の浸潤により,胆管と膵管の造影は不能であった. CTでは総胆管と肝内胆管の拡張,膵頭部に嚢胞成分を有する低吸収腫瘤がみられた.明らかな遠隔転移はみられなかった.MRIでは不整形の不均一な腫瘤で,TIで低~中等度の信号,T2で中~高信号を呈していた.膵頭部主膵管の狭窄,総胆管下部の圧排狭窄がみられた.PTCDによる減黄処置を施行した.胆汁細胞診は陰性であった.膵粘液癌の診断で幽門輪温存膵頭十二指腸切除術が施行された.切除標本では膵頭部に6X4.5cmの浸潤型の腫瘍がみられた.病理診断は,浸潤型粘液癌,ly0,v0,ne0,mpd(-),pCH(+),pDU(+),pS(+),pRP(+),pPVp(-),pA(-),pPL(-),pOO(-),pN0,pPCM(-),pBCM(-),pDPM(-)であった.術後の経過は良好であり,術後17日目に退院となった.【考察】鑑別疾患としては,IPMN由来の膵粘液癌,通常型膵管癌由来の粘液癌,粘液嚢胞腺癌があげられる.IPMN由来の膵粘液癌の特徴は,病理組織学的に浸潤部分を取り除いた場合IPMNとして矛盾がないこと,病理学的に膵管内非浸潤部と浸潤部との連続性を有することである.本例では上記特徴を満たし,膵管内浸潤部で腺腫様病変が存在し,また卵巣様間質がみられないことから,IPMN由来の膵浸潤癌と考えられた. IPMNでは十二指腸や胆管への浸潤が比較的多く,閉塞性黄疸をきたすこともあり,本例の経過と矛盾しない.【結語】IPMN由来と考えられた膵浸潤癌の一例を経験した.
索引用語 IPMN由来膵浸潤癌, 十二指腸浸潤