セッション情報 シンポジウム1「高齢者消化管癌診療の適正化と工夫」

タイトル S1-01:

80歳以上の高齢者に対する早期胃癌ESDの適応と安全性の検討

演者 阿曽沼 祥(みやぎ県南中核病院 消化器内科)
共同演者 高橋 貴一(みやぎ県南中核病院 消化器内科), 玉川 空樹(みやぎ県南中核病院 消化器内科), 油井 理恵子(みやぎ県南中核病院 消化器内科), 洞口 愛(みやぎ県南中核病院 消化器内科), 梅村 賢(みやぎ県南中核病院 消化器内科), 飯岡 佳彦(みやぎ県南中核病院 消化器内科), 大沼 勝(みやぎ県南中核病院 消化器内科), 三浦 雅人(みやぎ県南中核病院 消化器内科)
抄録 【目的】近年ESDは広く普及し、高齢者においても増加傾向にあるが、高齢者では併存疾患も多く、その有用性や安全性については不明な点が多い。今回我々は当院での高齢者に対するESDの治療成績につき検討した。【対象と方法】2009年4月から2013年9月までに当科で胃ESDを施行した158症例、197病変を79歳未満の非高齢群114例(Y群 平均70.9歳)と80歳以上の高齢群44例(E群 平均83.4歳)に分け、治療成績(適応、部位、切除時間、病変長径、標本長径、治癒切除率、偶発症)、入院期間、併存疾患、抗血栓薬内服、追加治療につき比較検討を行った。【成績】病変は、Y群でガイドライン内:適応拡大:適応外(病変数)が82:54:7、E群で各々33:14:7にて、有意にE群で適応外病変が多かった(p=0.049)。部位、切除時間、病変、標本長径、治癒切除率、入院期間は2群間で有意差はなかった。偶発症はY群、E群で後出血が各々5回、3回、穿孔は各々3回、1回みられ有意差はなかった。全併存疾患保有率はY群で68.4%、E群で81.8%であり、E群に多い傾向を認め(p=0.09)、特に脳疾患がY群14.0%、E群29.5%でE群に有意に多く認めた(p=0.02)。抗血栓薬内服はY群26.3%、E群34.1%でE群に多い傾向を認めた。追加治療は、適応内の切れ込み例(Y群8例)はいずれも経過観察となった。Y群の側方断端陽性(HM1)の3例は、2例は遺残認めず経過観察となり1例はAPCを追加した。適応外のうち3例は追加手術を施行、4例は経過観察となり再発は認めていない。一方、E群のHM1の1例はAPCにて追加治療を行い、適応外7例はいずれも経過観察を希望された。1例で20ヶ月後にリンパ節転移を認めたが再度手術を拒否され、1例は18ヶ月後に膵臓癌を認めたが経過観察となっている。【結論】高齢者においては適応外病変が多いものの切除率、合併症に差はなく、安全であり有用と考えられた。一方、高齢者では脳疾患をはじめとした併存疾患を有する症例が多くみられたことから、術前後の管理が重要であり、また、適応外でも追加手術を希望されない症例が多くみられたが原病死はみられず、治療の選択肢として許容できる可能性が示唆された。
索引用語 高齢者, ESD