抄録 |
症例は59歳の女性。主訴:舌のしびれ。既往歴:平成23年から高血圧にて近医にて加療。現病歴:平成25年10月2日頃から舌のしびれが出現し、10月7日に近医を受診。頭部MRI検査にて右側頭部髄膜腫が疑われ、当院脳神経外科に紹介となる。造影CT,MRIにて3個の髄膜腫が認められ、手術予定となるが、術前検査にて肝障害、LDH高値を認め、当科紹介となる。AST132IU/ml,ALT54IU/ml,ALP187IU/ml,LDH1398IU/ml,γ-GTP128IU/mlとAST,LDH優位の肝障害を認めた。LDHアイソザイムではLDH3.4.5の分画の上昇が見られた。肝障害の検索目的に腹部エコーを施行したところ、肝左葉に直径最大100mmの低エコー腫瘍を認め、その他肝内に多発する低エコー腫瘍を認め、転移性肝癌が強く疑われる所見であった。精査のために肝ダイナミックCTを施行。肝腫瘍は動脈相で周囲が淡く造影され、平衡相では低吸収を示し、転移性肝癌に矛盾しない所見であり、膵尾部にも造影効果に乏しい腫瘍を認めた。上下部内視鏡検査でも異常なく、膵尾部癌の肝転移と考えた。また、胸部CTにて多発転移も認めた。腫瘍マーカーを測定したところCEAは正常でCA19-9は340 U/mlと上昇していたが、AFP 332.9 ng/ml、PIVKA-II 634 mAU/mlと肝腫瘍マーカーの上昇も見られたため、肝腫瘍生検を施行。組織は腺癌の所見で膵臓癌肝転移に矛盾しない所見であった。入院後、左肩から前腕の疼痛の増強、右顔面神経麻痺が見られ、頭部MRIを再検したところ髄膜腫と思われた病変の増大を認め、経過から髄膜転移と考えられた。現在、オピオイドによる疼痛コントロールをしながら、TS-1による化学療法を施行中である。考察:髄膜転移にて発症し、AFP,PIVKA-IIが高値を呈した膵臓癌、多発肝転移の一例を経験した。現在、生検組織のAFP,PIVKA-IIの免疫染色を施行中であるが、AFP,PIVKA-IIの上昇する膵癌はまれで、文献的考察を加え報告する。 |