セッション情報 特別企画 後期研修医(卒後3-6年迄)

タイトル W2-01:

重症膵炎に伴う膵膿瘍が総胆管に穿破した1例

演者 齋藤 瑛里(仙台市立病院 消化器内科)
共同演者 境 吉孝(仙台市立病院 消化器内科), 菊地 達也(仙台市立病院 消化器内科), 川村 昌司(仙台市立病院 消化器内科), 長崎 太(仙台市立病院 消化器内科), 榛澤 崇(仙台市立病院 消化器内科), 高井 智(仙台市立病院 消化器内科), 齋藤 亜弥(仙台市立病院 消化器内科), 関根 仁(仙台市立病院 消化器内科)
抄録 (症例)57歳代男性 (主訴)右上腹部痛(既往歴)49歳時に房室ブロックにてペースメーカー装着。(現病歴、経過)右上腹部痛を主訴に当院ERに緊急搬送され、造影CT上膵腫大と腎下極以遠への炎症の波及を認め、重症膵炎の診断で入院となった。大量補液・抗生剤などの保存的治療により徐々に全身状態の改善を認めたが、第9病日のフォローCTでは膵頭部から骨盤腔位まで広範囲に脂肪壊死が拡大していた。23病日より突然の高熱と炎症反応の上昇(WBC22100, CRP23.6)を生じ、CTでは脂肪壊死部が嚢胞化し同部への細菌感染が疑われた。EUSを用い、十二指腸球部から膵頭部の嚢胞へ穿刺したところ膿汁の排泄が見られ、経鼻ドレナージチューブを嚢胞内に留置した(培養ではMRSAが検出され、膵膿瘍と確定診断した)。その後一旦炎症反応は改善したが、膿瘍腔の縮小はなかなか得られず炎症反応の再燃あり、第50病日に内瘻術を追加した。しかしその後も発熱が持続し経鼻チューブより緑黄色液の排泄あり、造影上膿瘍腔から総胆管へ細い瘻孔を通じ造影剤が流れ両者が交通していることが確認された。その後も経鼻チューブからの胆汁排泄と発熱持続、総胆管から膿瘍内への胆汁流出による炎症の持続が考えられた。瘻孔の閉鎖が必要と考えられたが、全身状態より外科手術は困難と判断され総胆管内にcoverd metallic stetを留置し、総胆管と膿瘍腔との交通の遮断を試みた。その結果、経鼻チューブからの胆汁排泄は認めなくなり、徐々に炎症は改善し膿瘍腔の縮小を認めた。その後、経鼻チューブを抜去しても炎症の再燃なく、入院から110病日に無事退院した。その後のfollow CTにおいても膿瘍の再発認めず、後日内視鏡下に内瘻チューブ及びmetallic stentを抜去した。膵仮性嚢胞の合併症としては感染、出血および穿破が挙げられ、穿破臓器として胃、十二指腸および大腸の報告例が散見されるが、総胆管への穿破は極めて稀である。この度重症膵炎に伴う膵膿瘍が胆管へ穿破しEUS下ドレナージと胆管ステント留置術により救命し得た貴重な一例を経験したので若干の文献的考察を加え報告する。
索引用語 膵膿瘍, 重症膵炎