セッション情報 特別企画 後期研修医(卒後3-6年迄)

タイトル O-33:

消化管出血,イレウスを契機に発見された回腸原発悪性リンパ腫の一例

演者 大方 英樹(岩手県立中央病院 消化器科)
共同演者 池端 敦(岩手県立中央病院 消化器科), 阿部 康弘(岩手県立中央病院 消化器科), 吉田 直記(岩手県立中央病院 消化器科), 植田 南(岩手県立中央病院 消化器科), 横山 直信(岩手県立中央病院 消化器科), 松本 信(岩手県立中央病院 消化器科), 高橋 太郎(岩手県立中央病院 消化器科), 三浦 真奈美(岩手県立中央病院 消化器科), 小原 範之(岩手県立中央病院 消化器科), 城戸 治(岩手県立中央病院 消化器科), 加藤 貴志(岩手県立中央病院 消化器外科), 小野 貞英(岩手県立中央病院 病理診断科), 村上 晶彦(岩手県立中央病院 内視鏡科), 天野 良彦(岩手県立中央病院 内視鏡科)
抄録 【症例】80歳代,男性.主訴:血便.家族歴:特になし.既往歴:高血圧,高脂血症,脳梗塞,左内頸動脈狭窄症,前立腺癌.現病歴:排便時に血便がみられ,当院を救急受診した.現症:血圧142/82mmHg,脈拍72/分.体温36.8度.貧血・黄疸なく,腹部に圧痛や腫瘤はみられず,肛門指診で新鮮血の付着がみられた.血液検査では異常所見はみられなかった.造影CTではS状,下行,上行結腸に憩室がみられ,S状結腸憩室では造影剤の漏出像がみられた.経口腸管洗浄剤で前処置後の大腸内視鏡検査では憩室はみられたが出血源は不明であった.1ヵ月後に再度血便があり,再入院となった.造影CT,大腸内視橋検査では出血源は不明であったが,上行結腸にも凝血塊がみられた.さらに1ヵ月後に腹部膨満感を訴え救急受診,再入院となった. CTでは回腸壁の肥厚とその口側の小腸のびまん性の拡張,鏡面像がみられた.大腸内視橋検査では回盲弁の20cm口側に全周性で易出血性の腫瘍がみられた.生検で悪性リンパ腫が疑われ,腹腔鏡補助下小腸切除術が施行された.病理組織では粘膜から漿膜下層にかけて異型リンパ球様細胞の増生がみられた.免疫染色でCD5(-),CD10(+),CD20(+),CD79a(+)であり,びまん性大型B細胞性リンパ腫と診断された.術後は良好に経過し術後9日目に退院となった.【考察】小腸原発の悪性腫瘍は消化管悪性腫瘍の1~3%を占め,癌,悪性リンパ腫,GISTが同程度の頻度でそれぞれ3割を占める.小腸悪性リンパ腫の初発症状は腹痛,穿孔などの急性腹症が大部分であり,消化管出血の頻度は10~20%である.本例では病巣からの出血は確認されていないがその可能性は否定できない.病期分類ではAnn Arbor分類に穿孔と腹膜炎の項目を取り入れたNaqvi分類が用いられている.本例では穿孔や腹膜炎の前に手術が施行されておりStage Iであった.本邦ではStage I,IIでは外科治療が,Stage III,IVではCHOP療法や放射線療法が行われているが,標準的な治療法は確立されていない.【結語】消化管出血,イレウスを契機に発見された回腸原発悪性リンパ腫の一例を経験した.
索引用語 回腸原発悪性リンパ腫, イレウス