抄録 |
【目的】肝庇護療法としてのグリチルリチン製剤静脈内投与は,以前よりC型慢性肝炎における重要な治療手段の一つとして用いられている.しかしながら,外来治療でのグリチルリチン製剤静脈内投与は,投与機会が頻回で且つ, 投与期間が無期限となるため,通院回数が増加し,高齢者にとっては大きな負担となることが多い.そこで今回我々は,グリチルリチン製剤静脈内投与中の高齢C型慢性肝炎患者に対し,根治目的に抗ウイルス療法を導入し,グリチルリチン製剤離脱の可否を検討したので報告する.【対象/方法】2009年11月よりグリチルリチン製剤静脈内投与中のC型慢性肝炎患者のうち,本人の強い希望にて抗ウイルス療法を導入した12人(男/女 2/10)を対象とした.患者背景は年齢78.4才(75-84),HCV-RNA量5.6Log IU/L(3.5-6.5),治療歴:初回/再燃/無効12/0/0例,IL28B TT /TG 9/3例,genotype 2a/2b/1b 7/0/5である.グリチルリチン製剤静脈内平均投与量は125.5ml/週,平均投与期間は68.3週である.グリチルリチン製剤静脈内投与中止後,直ちに抗ウイルス療法を実施した。抗ウイルス療法はテラプレビル3剤併用療法1例,PEG-IFN/RBV11例である.抗ウイルス療法終了48週後においてALT値が30IU/L未満で維持しているものをグリチルリチン製剤静脈内投与離脱とした.【結果】グリチルリチン製剤離脱率は100%(12/12)であった。全体のSVR率は50%(6/12),Genotype別のSVR率は1b/2a 40%(2/5)/67%(4/6)であった.抗ウイルス療法前後での血清生化学検査(前値/後値)はALT(53.6/23.6)IU/L,G-GT(52.9/33.4)IU/L,Plt(13.9/15.8)万,AFP(27.1/4.7)ng/mlと改善した.薬剤アドヒアランスはPEG-IFN/RBV/TRV(90.5%/37.7%/25%)であった.抗ウイルス療法中に副作用にて全例に貧血,脱毛を認め,1例に甲状腺機能亢進症,尿路感染症を認めたが投与中止となるものは無かった.【結論】グリチルリチン製剤静脈内投与離脱を目標とした抗ウイルス療法は高齢C型慢性患者においても安全に施行可能であり,有用である可能性が示唆された. |