セッション情報 特別企画 初期研修医(卒後2年迄)

タイトル O-20:

テルビナフィン塩酸塩により肉芽腫性肝炎をきたした一例

演者 田坂 俊(東北労災病院 肝臓科)
共同演者 小林 智夫(東北労災病院 肝臓科), 山川 暢(東北労災病院 肝臓科), 久保田 文恵(東北労災病院 病理診断科), 岩間 憲行(東北労災病院 病理診断科), 阿部 直司(東北労災病院 肝臓科)
抄録 【症例】71歳、女性【主訴】全身倦怠感、そう痒【既往歴】本態性振戦、急性虫垂炎【現病歴】足白癬の診断で近医Aからテルビナフィン塩酸塩を処方された。内服開始から2週間が経過した時の肝機能値は正常であった。内服開始29日目に体幹と四肢の発疹と褐色尿が出現した。翌日皮膚科近医Bを受診した際にテルビナフィン塩酸塩を中止して抗ヒスタミン薬外用薬を処方された。更に6日後にかかりつけ近医Cを受診してT.Bil 9.9 AST 180 ALT 296 ALP 1201 LDH 268 GGTP 409 と黄疸を伴う肝機能障害を指摘され当科に紹介され入院した。【現症】体温36.7℃ 血圧141/74nnHg 皮膚黄染・眼球結膜黄疸あり 皮膚に発疹を認めず・掻痒感軽度【入院時検査所見】T.Bil9.9 AST 180 ALT 296 ALP 1201 LDH 268 GGTP 409 WBC 6200 RBC 439万 PLT 34.4万 PT 100 好酸球2.6% HBs抗原陰性 HCV抗体陰性【経過】画像検査では、肝内外胆管に結石・腫瘍等を認めず閉塞性黄疸は否定的であった。第2病日に肝生検を施行した。肝組織像は、グリソン鞘・中心静脈周囲・肝実質域に類上皮細胞からなる小型の肉芽腫を多数認めた。好酸球の浸潤はグリソン鞘・肝実質域に少数認めるだけであった。テルビナフィン塩酸塩による薬剤性肝障害と診断した。原因薬剤の中止と肝細胞保護目的にウルソデオキシコール酸を投与して第38病日にT.Bil 3.5 AST 110 ALT 159 ALP 517 LDH 173 GGTP 67 まで改善したため退院して外来経過観察に移行した。【考察】サルコイド型肉芽腫の肝組織像を呈する疾患の主な鑑別診断としては、原発性胆汁性肝硬変、サルコイドーシス、薬剤性肝障害、結核である。画像検査・血清ACE等の結果から薬剤性肝障害以外は否定した。薬物リンパ球刺激試験は発疹消失から7日が経過しており陰性であった。【結語】テルビナフィン塩酸塩により肉芽腫性肝炎をきたした一例を経験した。同薬使用時は適宜肝機能のモニターを行うことが必要であると考えられた。
索引用語 テルビナフィン, 肉芽腫性肝炎