セッション情報 一般演題

タイトル O-14:

肝細胞癌治療中にTrousseau症候群を発症した一例

演者 水野 恵(山形大学 医学部 消化器内科)
共同演者 西瀬 雄子(山形大学 医学部 消化器内科), 勝見 智大(山形大学 医学部 消化器内科), 冨田 恭子(山形大学 医学部 消化器内科), 佐藤 智佳子(山形大学 医学部 消化器内科), 奥本 和夫(山形大学 医学部 消化器内科), 渡辺 久剛(山形大学 医学部 消化器内科), 齋藤 貴史(山形大学 医学部 消化器内科), 上野 義之(山形大学 医学部 消化器内科)
抄録 Trousseau症候群は、悪性腫瘍に伴う血液凝固能の亢進により血栓症をきたす病態である。消化器癌の中では膵癌を原疾患とした症例が多いが、今回、肝細胞癌に伴って発症したTrousseau症候群を経験したので報告する。【症例】78歳、男性。【主訴】右季肋部~下腹部痛。【既往歴】60歳 糖尿病。【家族歴】父:脳血管障害。【現病歴】20年前からC型慢性肝炎にて近医に通院していた。2003年に肝細胞癌を初めて指摘され、当科を紹介受診し、RFAにて治療した。以後、肝細胞癌の再発または新病変に対して、RFA、PEIT、TACEを繰り返し施行した。2012年7月よりソラフェニブの内服を開始し、外来通院にて経過観察していた。2013年3月31日に急激な腹痛が生じ、救急外来を受診した。腹部~骨盤部CTにて、右尿管結石と診断され、同日当科入院となった。【入院時検査所見】Alb 3.1 g/dl, T-Bil 0.8 mg/dl, AST 43 U/l, ALT 31 U/l, ALP 553 U/l, γ-GTP 72 U/l, BUN 20 mg/dl, Cre 1.06 mg/dl, CRP 1.77 mg/dl, WBC 12410/μl, Plt 8.9万/μl, PT-INR 0.90, AFP 15.3 ng/ml, PIVKA2 24 mAU/ml 【経過】尿管結石による症状は入院後に軽快し、水腎症も改善した。しかし、第3病日から見当識障害が出現した。同日の頭部CTでは明らかな異常を指摘できなかったが、第5病日の頭部CTでは右後頭葉に低吸収域を認めた。脳梗塞を疑って頭部MRIを施行したところ、拡散強調像で小脳、両側後頭葉などに多発する高信号を認めた。Trousseau症候群と診断し、オルガラン投与を開始した。第10病日からはワーファリン内服に切り替えたが、凝固異常の再燃なく、経過良好にて退院となった。現在まで脳梗塞の再発を認めず、外来経過観察中である。【考察】悪性腫瘍に血栓症を合併する頻度は、卵巣癌や膵癌で高いが、肝細胞癌では稀である。医学中央雑誌で検索した限りでは、肝細胞癌に合併したTrousseau症候群の報告は2例のみであった。【結語】肝細胞癌の治療中にTrousseau症候群を発症し、抗凝固療法にて病態が安定している一例を経験したので、若干の文献的考察を加えて報告する。
索引用語 肝細胞癌, Trousseau症候群