セッション情報 一般演題

タイトル O-10:

診断に苦慮し各種検査から総合的に日本住血吸虫症感染既往の1例

演者 岩田 朋晃(東北大学病院 消化器内科)
共同演者 近藤 泰輝(東北大学病院 消化器内科), 木村 修(東北大学 東北メディカルメガバンク機構 地域医療支援部門), 藤島 史喜(東北大学病院 病理学講座), 藤坂 泰之(東北大学病院 消化器内科), 諸沢 樹(東北大学病院 消化器内科), 中込 悠(東北大学 東北メディカルメガバンク機構 地域医療支援部門), 二宮 匡(東北大学病院 消化器内科), 嘉数 英二(東北大学病院 消化器内科), 小暮 高之(東北大学病院 消化器内科), 岩崎 隆雄(東北大学病院 消化器内科), 下瀬川 徹(東北大学病院 消化器内科)
抄録 【緒言】日本住血吸虫症は1904年に日本において病原体である日本住血吸虫が発見された人畜共通感染症である。1996年に収終息宣言がなされた以後は、国内で遭遇する症例は国外感染後の輸入症例か、国内感染での慢性期の症例である。国内での感染既往と考えられる症例を経験したため、文献的考察を加えて報告する。【症例】66歳、男性【既往歴】50歳代で原因不明の心外膜炎、胸膜炎。60歳で膀胱癌(CR)。【生活歴】12歳まで山梨県在住。【現病歴】48歳頃から発熱を伴わない慢性的な高CRP血症、胆道系酵素優位の肝機能障害を指摘されていた。49歳頃から間欠的な関節痛などを認めるようになり、徐々に増悪していった。膠原病等の精査を続けていたが、原因不明のまま経過していた。65歳時に症状等の改善を認めないため、当院血液免疫科へ紹介となった。同科において諸検査を施行されるも原因不明であった。しかしながら、軽度肝機能障害を認めたため当科へ紹介となった。採血上、慢性炎症反応や軽度胆道系酵素異常、非特異的IgE上昇を認めた。CT検査では、肝内にCT値の低下している領域がまだらに存在しており、明らかな石灰化等は認めなかった。造影早期から平衡相にかけて、肝辺縁に斑状、索状に強い増強効果を認めた。病理組織においては、石灰化や、虫卵・虫体を確認できず日本住血吸虫症の断定はできなかったが、門脈内膜の線維性閉塞と好酸球や組織球の集積を認め、日本住血吸虫症感染既往に矛盾しない結果であった。抗日本住血吸虫虫卵抗体検査、PCR検査を施行したところ、ともに陰性ではあったが、抗体検査では陰性対照よりは高値を示した。諸検査結果から、日本住血吸虫症感染既往と診断した。【結語】本症例は虫卵の排泄は認められなかったが、各種画像所見、血液検査、病理組織所見、現病歴聴取により日本住血吸虫症の感染既往と診断した。特徴的な画像所見を呈するような症例においては、かつての流行地以外においても日本住血吸虫症は念頭に置き詳細な現病歴を聴取すること重要であると考えられた。
索引用語 日本住血吸虫症, 腹部CT