セッション情報 一般演題

タイトル O-29:

イレウスチューブによる減圧で自然還納し、再発なく経過した閉鎖孔ヘルニアの1例

演者 柏木 真人(福島県立宮下病院 内科)
共同演者 愛澤 正人(福島県立宮下病院 内科), 黒沢 正喜(福島県立宮下病院 内科)
抄録 【はじめに】当院は山間地域に位置する小さな病院であり、入院患者は平均して80~90歳代で、全身状態が不良の患者が多い。閉鎖孔ヘルニアは非常に稀な症例ではあるが高齢女性に多く、また、過半数以上が絞扼性イレウスに進展しやすいため、外科的な治療が望ましいが、全身状態不良のため手術侵襲に耐えられない症例もしばしば経験される。【症例】89歳、女性。【既往歴】88歳頃より認知症の進行が見られ、徐々に寝たきりとなった。【現病歴】20XX年6月17日より排便がなく、6月27日の夜に3回ほど非血性の嘔吐が見られ、当院へ救急搬送され精査加療目的に入院となった。腹部単純CT検査では小腸の拡張と腸液の貯留を認め、左の閉鎖孔より腸管の突出を認め、閉鎖孔ヘルニアによるイレウスと診断された。寝たきりの状態であり、全身状態からは手術侵襲に耐えられない可能性が高いと判断し、家族に十分インフォームドコンセントをとった上で、イレウスチューブによる減圧にて保存的に経過をみる方針となった。6月28日にイレウスチューブを経鼻的に挿入し、7月1日に腹部単純CT検査を再検したところ、閉鎖孔ヘルニアの自然還納が見られていた。経口摂取再開後も症状再燃なく、7月24日退院となった。その2年後に老衰にて亡くなるまで、閉鎖孔ヘルニアの再発は見られなかった。【考察】閉鎖孔ヘルニアは一般的には手術によるヘルニア修復と再発予防を行うことが望ましいが、患者の全身状態が不良の場合は、手術による侵襲により術後の全身状態改善が難しい可能性が高く、患者の状態によってはイレウスチューブによる減圧にて保存的に経過をみるという選択もあると考えられた。【結語】今回我々はイレウスチューブによる減圧で、保存的に閉鎖孔ヘルニアの自然還納を認めた症例を経験したので、当院での過去2年の症例をふまえて、若干の文献的考察を加えて報告する。
索引用語 閉鎖孔ヘルニア, 高齢者