セッション情報 特別企画 後期研修医(卒後3-6年迄)

タイトル O-60:

急性膵炎にて発見された胆管非拡張型膵・胆管合流異常の一例

演者 阿部 康弘(岩手県立中央病院 消化器科)
共同演者 池端 敦(岩手県立中央病院 消化器科), 大方 英樹(岩手県立中央病院 消化器科), 横山 直信(岩手県立中央病院 消化器科), 高橋 太郎(岩手県立中央病院 消化器科), 小原 範之(岩手県立中央病院 消化器科), 城戸 治(岩手県立中央病院 消化器科), 村上 和重(岩手県立中央病院 消化器外科), 小野 貞英(岩手県立中央病院 病理診断科), 村上 晶彦(岩手県立中央病院 内視鏡科), 天野 良彦(岩手県立中央病院 内視鏡科), 三浦 真奈美(岩手県立中央病院 内視鏡科), 松本 信(岩手県立中央病院 内視鏡科)
抄録 【症例】30歳代,女性.主訴:心窩部痛,嘔気.家族歴:特になし.既往歴:特になし.嗜好:喫煙なし,機会飲酒のみ.現病歴:約1年前より数日間で軽快する心窩部痛が時々みられていた.同様の心窩部痛,嘔気が出現し近医を受診した.USで胆石と膵腫大を指摘され,当院を紹介され受診した.現症:貧血・黄疸なく,心窩部から臍周囲に圧痛がみられた.血液検査では高アミラーゼ血症(2264 IU/L),軽度の肝機能異常がみられたが,抗核抗体陰性,IgG4正常値であった. CTでは膵頭部がやや腫大していたが造影不良域はなく膵周囲に液体貯留はみられなかった.MRCPでは膵管や総胆管の拡張はみられなかったが,共通管が長く描出され膵・胆管合流異常が疑われた.USでは多数の胆石と胆嚢壁の肥厚がみられた.EUSでは胆管拡張はなく,十二指腸壁外で胆管が膵管に合流する膵管型の合流異常がみられた.入院後は絶食,補液,ガベキサートメシル酸の投与で症状は軽快したが,食事再開にて腹痛,高アミラーゼ血症がみられた.胆管非拡張型膵・胆管合流異常の診断にて,腹腔鏡補助下胆嚢摘出術が施行された.切除された胆嚢内には数mm大の黒色石が30個程度みられた.病理組織学的に胆嚢に悪性像はみられなかった.術後は食事開始後も膵炎の再燃はみられず順調に経過し,現在外来で経過観察中である.【考察】膵・胆管合流異常は解剖学的に膵管と胆管が十二指腸壁外で合流する先天性の形成異常である.十二指腸乳頭部括約筋作用が膵胆管合流部に及ばないため,膵液と胆汁が相互に逆流することにより様々な病態を惹起するともに胆道癌の発生母地となる.胆管拡張型と胆管非拡張型に分類され,胆管拡張の有無により臨床症状や癌発生頻度が異なる.急性膵炎は成人の約9%に合併するが,臨床的に一過性のものや軽症で再発性のものが多いなどの特徴がみられる.胆管非拡張型では予防的胆嚢摘出術が行われるが,分流手術後と非分流手術後の胆管癌発生頻度に関する報告はなく今後の症例集積が必要である.【結語】急性膵炎にて発見された胆管非拡張型膵・胆管合流異常の一例を経験した.
索引用語 膵・胆管合流異常, 胆管非拡張型