セッション情報 特別企画 後期研修医(卒後3-6年迄)

タイトル O-57:

診断に難渋した膵漿液性嚢胞腺腫(SCN)の1例

演者 千葉 宏文(岩手県立中部病院  消化器内科)
共同演者 渡邊 崇(岩手県立中部病院  消化器内科), 高橋 祐輝(岩手県立中部病院  消化器内科), 伊藤 洋信(岩手県立中部病院  消化器内科), 高橋 秀一郎(岩手県立中部病院  消化器内科), 三上 恵美子(岩手県立中部病院  消化器内科), 佐野 俊和(岩手県立中部病院  消化器内科), 三浦 達也(岩手県立中部病院  消化器内科), 及川 隆洋(岩手県立中部病院 外科), 上杉 憲幸(岩手医科大学 医学部 病理学講座 分子診断病理学分野)
抄録 【症例】77歳女性【主訴】腹部腫瘤精査目的【既往歴】左網膜中心静脈閉塞症、糖尿病(内服治療)【現病歴】前医でスクリーニング目的に撮影した腹部CTで腹腔内に腫瘤をみとめ精査加療目的に当科紹介となった。【現症】身長139.0cm体重49.9kg 腹部は平坦・軟で腫瘤を触知せず【血液検査所見】AMY 49IU/l、HbA1c 8.4%(NGSP)、CEA、CA19-9、AFP、DUPAN-2、SPan-1は正常範囲であった。【画像所見】腹部-骨盤部単純CT(造影剤で心肺停止の既往あり単純のみで施行):腹腔内に10cm程度の嚢胞性腫瘤あり、内部は低吸収で隔壁を認めた。膵は認識できず膵全体が脂肪置換されているものと思われた。腹部MRI:T1で低信号、T2高信号となる多房性嚢胞性腫瘤で内部の充実成分は明らかでなかった。腹部超音波検査:腫瘤は膵体尾部と接し、内部に嚢胞様の低エコーが散在していたが、腫瘤の大部分は高エコーであった。カラードップラーでは腫瘤内に血流を認めなかった。膵実質は全体に高エコーでやや腫大していた。超音波内視鏡検査:病変は大きな嚢胞と小さな嚢胞で形成され、一部、蜂巣状構造を認めた。【経過】脂肪置換された膵から発生した膵SCNを第一に考えたが、造影検査が施行できず十分に評価できなかった。鑑別として腸間膜原発のGISTなどが考えられた。腫瘍径から悪性の可能性が否定できないため十分なインフォームド・コンセントのもと外科的切除施行した。【病理所見】膵体部に85×68mm大の弾性軟の腫瘤あり。膵実質は不明瞭であった。組織学的に病変は均一な粘液非産生性の単層上皮で被覆された数mm大の小嚢胞腔の増殖により構成され、細胞異形、配列の乱れ、核分裂像などを認めず漿液性嚢胞腺腫と診断した。背景膵は膵管、ランゲルハンス島、腺房細胞を認めるが大部分が脂肪で置換されていた。【考察】本症例で膵は高度に脂肪置換されLipomatous pseudohypertrophy of the pancreas と考えられた。SCNとしては比較的典型的な画像所見であったがCT・MRIで膵全体を認識できず診断に難渋した。【結語】膵SCNの1例を経験した。画像所見が興味深い症例であり文献的考察を加え報告する。
索引用語 膵漿液性嚢胞性腫瘍, lipomatous pseudohypertrophy of the pancreas