セッション情報 一般演題

タイトル O-21:

胃癌術後に難治性腹水を発症したC型慢性肝炎患者に対して補中益気湯が有効だった一例

演者 櫻井 広子(岩手県立中央病院 消化器科)
共同演者 小原 範之(岩手県立中央病院 消化器科), 阿部 康弘(岩手県立中央病院 消化器科), 大方 英樹(岩手県立中央病院 消化器科), 松本 信(岩手県立中央病院 消化器科), 横山 直信(岩手県立中央病院 内視鏡科), 高橋 太郎(岩手県立中央病院 消化器科), 三浦 真奈美(岩手県立中央病院 内視鏡科), 天野 良彦(岩手県立中央病院 内視鏡科), 城戸 治(岩手県立中央病院 内視鏡科), 池端 敦(岩手県立中央病院 消化器科), 村上 晶彦(岩手県立中央病院 内視鏡科)
抄録 【症例】60歳代 男性【既往歴】25歳頃 覚醒剤使用、40歳頃 交通事故で頚椎骨折、60歳~糖尿病、手術、輸血歴なし。【現病歴】平成24年に高CEA血症、C型慢性肝炎にて近医より当科紹介初診。上部内視鏡にて前庭部前壁に陥凹病変あり生検にて高分化~中分化腺癌の診断。CTにてリンパ節腫大も疑われ、手術の方針となった。翌月、遠位側胃切除術施行された(pT1a,N0,M0)。術中肝硬変の所見無し。術後経過順調で退院となるが、術後17日目より腹部膨満出現し、縫合部から腹水の流出が認められるようになったため、当科紹介となる。【経過】腹水検査を行ったところ、高浸透圧の浸出性腹水であった。好中球数は特発性細菌性腹膜炎(SBP)の診断を満たすほど上昇はしていなかったが、細菌性腹膜炎様の病態を疑い、適宜腹水濃縮還元を行いつつ、利尿剤、抗生剤投与を行った。経過中、一過性に腹水中の好中球数が上昇することもあった。2週に1回の腹水濃縮還元を13回、およそ半年繰り返したが一向に改善することなく、抗生剤も無効であったため中止していた。13回目の腹水濃縮還元後、体力増進を目的に補中益気湯を開始したところ、次回から腹水を採取できないほどに腹水量が減少した。その後は少量の腹水は残っているものの、処置が必要となるほどの腹水は認めずに経過している。【結語】本症例は肝硬変ではなく、アルブミン値も保たれており、腹部手術後に発症しているため典型的なSBPではない。しかし、難治性の浸出性腹水であり、SBPに類似した病態であると考えられた。補中益気湯開始後に腹水が著明に減少したことから、SBP患者でも有効な可能性があり、今後の症例の蓄積が必要と考えられる。
索引用語 術後, 難治性腹水