セッション情報 特別企画 後期研修医(卒後3-6年迄)

タイトル O-05:

初診時に急性胆嚢炎と診断できず壊疽性胆嚢炎に進展した2例

演者 高住 美香(福島赤十字病院 内科・消化器科)
共同演者 黒田 聖仁(福島赤十字病院 内科・消化器科), 齋藤 広信(福島赤十字病院 内科・消化器科), 寺島 久美子(福島赤十字病院 内科・消化器科), 宮田 昌之(福島赤十字病院 内科・消化器科)
抄録 【緒言】急性胆嚢炎は日常臨床でよく遭遇する疾患の1つである。急性胆管炎・胆嚢炎診療ガイドライン2013では、急性胆嚢炎の診断基準はA:局所の臨床徴候、B:全身の炎症所見、C:急性胆嚢炎の特徴的画像検査所見と定められているが、時にこれらの所見が揃わない急性胆嚢炎も存在する。今回、初診時に急性胆嚢炎と診断できず壊疽性胆嚢炎に進展した2例を経験したので報告する。【症例1】61歳男性。数日前からの上腹部重苦感を主訴に当科外来を受診した。血液検査ではWBC 4900/μl、CRP 0.67 mg/dlと軽度の炎症所見のみであったが、症状が強く経過観察目的に入院した。腹部超音波検査、造影CTでも胆嚢腫大や壁肥厚、胆石は認められなかった。入院後、鎮痛剤投与にて経過観察していたが上腹部痛は改善しなかった。入院第8病日に施行した血液検査でWBC 10200/μl、CRP 28.66 mg/dlと著明な炎症所見を認めたため再度造影CTを施行し、胆嚢壁肥厚と胆嚢壁濃染部の断裂所見を認めた。急性胆嚢炎の診断で緊急手術が施行され、壊疽性胆嚢炎の所見であった。【症例2】80歳男性。上腹部痛の精査目的に近医より当科紹介された。来院時痛みは左下腹部へ移動しており、触診上も同部の圧痛が最大であった。入院時血液検査ではWBC 11400/μl、CRP 0.04 mg/dlと軽度の炎症所見を認めた。腹部造影CTでは胆嚢の軽度腫大と胆石を認めたが壁肥厚は明らかではなく、また疼痛部位が左下腹部であったため大腸憩室炎等を疑い絶食、抗生剤投与による加療を開始した。入院第4病日の血液検査でWBC 11400/μl、CRP 29.21 mg/dlと著明な炎症所見を認め、再度腹部超音波検査、造影CTを施行し、胆嚢壁肥厚と周囲の液体貯留を認めた。準緊急的に手術を施行され、数カ所の穿孔を伴う壊疽性胆嚢炎の所見であった。【結語】診断に苦慮し壊疽性胆嚢炎に進展した2例を経験した。初診時に診断基準を満たさなくても胆嚢炎の可能性を考え、繰り返し臨床徴候や検査所見の評価をすることが重要と思われた。急性胆嚢炎の臨床徴候、検査所見、CTや超音波などの画像診断に関し文献的考察を加え報告する。
索引用語 胆嚢炎, 診断