セッション情報 特別企画 後期研修医(卒後3-6年迄)

タイトル W2-03:

原因としてPPI内服が疑われた鉄欠乏性貧血の一例

演者 橋本 林太朗(仙台厚生病院 消化器内科)
共同演者 松田 知己(仙台厚生病院 消化器内科), 水野 浩志(仙台厚生病院 消化器内科), 幸喜 沙里(仙台厚生病院 消化器内科), アデル バドラン(仙台厚生病院 消化器内科), 二瓶 公佑(仙台厚生病院 消化器内科), 青木 隼人(仙台厚生病院 消化器内科), 中條 恵一郎(仙台厚生病院 消化器内科), 宮下 祐介(仙台厚生病院 消化器内科), 奥薗 徹(仙台厚生病院 消化器内科), 濱本 英剛(仙台厚生病院 消化器内科), 山岡 肇(仙台厚生病院 消化器内科), 佐藤 俊(仙台厚生病院 消化器内科), 高林 広明(仙台厚生病院 消化器内科), 三宅 直人(仙台厚生病院 消化器内科), 三島 利之(仙台厚生病院 消化器内科), 西条 勇哉(仙台厚生病院 消化器内科), 石橋 潤一(仙台厚生病院 消化器内科), 中堀 昌人(仙台厚生病院 消化器内科), 長南 明道(仙台厚生病院 消化器内科)
抄録 【症例】50歳台男性. 狭心症,高血圧症,糖尿病,脂質異常症にて当院循環器内科に通院していた.食後心窩部不快感など胃酸逆流症状見られたため,2011年1月よりrabeprazole 10mg/日を近医で処方された. rabeprazole内服開始に伴い,上記症状は改善した. その後, Hb値(g/dL)は徐々に低下したため(2010/12 14.3, 2011/2 12.4, 2011/11 10.4, 2013/2 8.3), 貧血精査目的で当科を紹介受診した. この時の血液検査所見はHb 8.3 g/dL, MCV 66.7 fl, 血清鉄 10μg/dL, フェリチン 4.1 ng/mL, UIBC 341μg/dLであり,鉄欠乏性貧血の病態と考えられた. 消化管検索として施行した上部消化管内視鏡ではopen-typeの萎縮性胃炎を認めるのみで,下部消化管内視鏡検査でも貧血の原因となりうる異常所見を認めなかった. 2013年3月カプセル内視鏡およびダブルバルーン内視鏡検査で小腸に明らかな出血源は認めなかった. また,この間に鉄剤(ferrous fumarate)投与を行っていたが, 貧血の改善は乏しかった(2013/5 Hb 8.8). そこでPPIによる鉄吸収障害による鉄欠乏状態を疑い, rabeprazoleを中止しfamotidineに変更した. その後、Hb値は徐々に正常化した(2013/7 9.1, 2013/9 11.8, 2013/10 13.3).【考察】PPI内服により、鉄, ビタミンB12, Zn, Mgなどの吸収障害がおこることが知られている. また,H.pyroli感染者ではferrous salfate投与と比べてferrous fumarate投与での生体鉄吸収は極端に不良であるとの報告がある。本症例ではPPI投与後の経過とHb値が相関しており, 高度の萎縮性胃炎を有する患者におけるPPI内服が貧血の直接的原因であった可能性が考えられた.
索引用語 PPI, 貧血