共同演者 |
引地 拓人(福島県立医科大学附属病院 内視鏡診療部), 佐藤 匡記(福島県立医科大学医学部 消化器・リウマチ膠原病内科学講座), 高木 忠之(福島県立医科大学医学部 消化器・リウマチ膠原病内科学講座), 中村 純(福島県立医科大学医学部 消化器・リウマチ膠原病内科学講座), 杉本 充(福島県立医科大学医学部 消化器・リウマチ膠原病内科学講座), 藁谷 雄一(福島県立医科大学医学部 消化器・リウマチ膠原病内科学講座), 菊地 眸(福島県立医科大学医学部 消化器・リウマチ膠原病内科学講座), 紺野 直紀(福島県立医科大学医学部 消化器・リウマチ膠原病内科学講座), 小原 勝敏(福島県立医科大学附属病院 内視鏡診療部), 大平 弘正(福島県立医科大学医学部 消化器・リウマチ膠原病内科学講座) |
抄録 |
【目的】高齢化社会の進行により,85歳以上の高齢者(以下,超高齢者)の早期胃癌症例に遭遇する機会が増えている.超高齢者は,全身の各臓器の予備能が低下していることが多いため,ESDを施行した場合には術中・術後の予期せぬ偶発症が危惧される.また,ESD後の予後も明らかではない.したがって,超高齢者に対してもESDを施行するべきか,その判断に迷うことが多い.そこで超高齢者に対する胃ESDの有用性と問題点を検討した.【方法】2003年7月から2013年10月までに当院で胃ESDを施行した超高齢者34症例37病変を対象に,治療成績と予後を検討した.【成績】患者背景は,平均年齢86.7歳(85-90),性別は男21例,女13例, 病変部位(U/M/L)は10/10/17病変,抗血栓薬内服例者は8例(23.5%)であった.治療成績は,切除標本長径42.0mm(23-70), 腫瘍長径20.3mm(9-52), 切除時間79.9分(24-320), 深達度(M/SM1/SM2)は30/5/2であった.全例でESDの完遂が可能であり,完全一括切除率は92.0%(34/37), 治癒切除率は73.0%(27/37)であった.非治癒切除例は, 1例で胃全摘術を施行され, 残り9例は経過観察をされた.偶発症は,狭窄2.7%(1/37), 肺炎2.7%(1/37)で後出血や穿孔は認めなかった.入院期間中に1例が虚血性腸炎を, 1例がMRSA腸炎を発症した. 1例で,肺炎とMRSA腸炎により33日間の入院を要した.また,1例は体力低下によりリハビリ目的に他院へ転院した.ESD後の予後は, 平均観察期間32.8か月(1-97)で, 生存率は1年92%, 3年80.0%, 5年71.0%であった.死亡例は6例で, 死因は肺炎1例, 大動脈弁狭窄症による心不全1例, 老衰1例, 大腸癌1例, 原因不明の心停止1例, 詳細不明1例であった.なお,非治癒切除で経過観察となった9例は,平均16.7か月(1-42)の観察期間で,いずれも再発はなく,胃癌関連死を認めなかった.【結論】超高齢者でも,安全かつ確実に胃ESDを施行できることが示唆された.しかし,ESD後1年以内の死亡例や他臓器癌による死亡例を認めており, ESD前の全身状態の評価が重要であると思われた. |